マネジャーへのインタビュー 新しい時代のマネジメントはどうあるべきか(1)

2019年11月26日

部下の指導時間を
妨げているものは何か

マネジャーA さん

部下に対して、顧客をどう攻めるかなどの戦略を指導する時間がほしいのだが、十分な時間がとれておらず、それが自分自身ストレスになっている。売上の進捗を資料にしたり、社員の労働時間を管理してその結果を会社に報告したりするなど、会社へ提出すべきものはたくさんある。これらの業務は直接的に売上に貢献するものではないが、締め切りが明確にあり、かつ提出が義務化されているもの。このため、必然的に優先順位を高くして対応しなくてはならない。

一方、部下への個別指導などの時間は、会社として義務づけられているものではないため、どうしても後回しになる。

私自身、プレイングマネジャーでもあるので、自分が営業活動を行わなければならず、そこにも課題がある。売上規模が大きい重点顧客については、相手側が営業担当の役職を気にすることが多く、メンバー1人ではメンツが立たない。そうなると、重点顧客を担当しているベテランメンバーと、営業のために同行する機会が必然的に多くなる。本来は、キャリアが浅い人たちに、営業の方法論などを直接指導するために同行の機会を作るべきだが、十分にできていない。

マネジメントに
リーダー職の活用を

マネジャーB さん

私の部署は、担当しているエリアが非常に広く、私自身が出張する機会も多い。また、担当する部下も多いため、そもそもマネジメントの時間がほとんどとれない。私の部署で扱っているサービスは、信頼関係で受注が決まることが多く、出張を減らすことも難しい。

このため、細かいことは私に相談するのではなく、できるだけメンバー間で解決するようにと、指導している。たとえば、サービスの提供でトラブルがあった場合でも、原則としてメンバーが対応することになっている。もちろん、顧客にとっては、トラブルがあった場合には上司が出てきた方がよいのだろうが、そこは割り切りが必要。やや昭和的な方法なのかもしれないが、「上司を出すのは恥だぞ」とメンバーには伝えている。

その代わり、メンバー間で相談する体制はしっかりと構築している。体制の柱として、リーダーに権限を大きく委譲した。トラブル対応に関しても、まずはリーダーを中心にメンバー間で問題解決のための方法を相談させていて、実際に多くのトラブルはそれで解決する。

日頃の労働時間の管理なども、私は一切触らずに、リーダーに任せている。このほかにも、マネジャーがやるべき仕事とそうではない仕事を棚卸しして、私がやる必要がない仕事は基本的にやらないようにしている。

営業同行の日程は
事前に入念に計画

マネジャーC さん

部下への指導は、主に営業同行をするタイミングで行うことにしている。それぞれのメンバーに対して、月に何回の営業同行をするかをあらかじめ決めておき、その計画はしっかりと守っている。営業同行は手間暇がかかるが、営業が至らないせいで失注する事態は避けなければならないと思っている。この点、実際の営業現場をみながら指導を行うことは、キャリアが浅いメンバーを中心に、部下育成の観点で効果的である。

営業同行の実際のプロセスについては、まず任意の場所で集合し、実際に営業活動を行い、ともに会社まで戻るという形となる。部下への指導を行うタイミングは、帰り道。部下の営業活動をみて、どこに課題があってどうすべきだったかなど、毎回指導している。

そのほかのプロセスでいうと、事前準備については、特に何か行っているわけではない。毎回、帰り際に次回の課題などを確認して、それを踏まえて営業に向かってもらっている。また、営業活動の最中は基本的には口をはさまないことにしている。言っていることが間違っている場合のみ訂正などはしている。各個人の営業のどこが課題でどう解決していくかについては、営業同行とは別に、人事考課のタイミングで重点的にすり合わせを行っている。

指導の内容については、個人によって異なるが、いくつかの典型的なパターンがある。ケースとして多いのは、顧客とのコミュニケーションに課題があるというもの。極端にいえば、営業時間のほとんどをこちらからの説明にあててしまうことがある。その一方で、どのような要望がありますかといった形で要望だけを聞いて、司会進行のようになってしまうこともある。こうした課題のあるメンバーは、実際の営業の様子から問題点を指摘するだけで、少しずつ改善していく傾向にある。

ただ、徹底的に指導しても、頭打ちになってしまうメンバーはいる。最終的には、営業はセンスなのだ。しかし、各メンバーのもっているものを最大限引き出すところまでは、マネジャーによる指導でできると思っている。

時間の確保という観点でみると、正直なところ無理やり作っているというのが現実。私自身が、平均して1日10時間くらいは働いていて、かなり長時間労働になってしまっている。そうしたなかでも、日々のコアな時間は部下への指導に使いたいという思いがあり、そこはこだわっていきたいと思っている。

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