離職期間中の学びは、再就職後の仕事満足を高めるか

2020年01月21日

再就職した女性が、やりがいを感じながら生き生きと働いていくために、何が役立つのだろうか。今回は、再就職後に働き続けている女性に注目し、どのような場合に仕事満足を得ているのかをみていく。

再就職後に働き続ける女性の半数は、仕事に「まあまあ」満足している

再就職したあと、現在も働き続けている女性の仕事満足はどのような状況にあるのだろうか。仕事満足にはさまざまな種類があるが、ここでは以下の4つについて仕事満足の状況を確認する。


1. 自分の仕事にやりがいを感じている(やりがい実感)
2. 大切な仕事をしていると感じる(大切な仕事)
3. 仕事で自分の持ち味を活かすことができている(持ち味活用)
4. これからどう働いていきたいか、自分なりの見通しを持っている(自分なりの働く見通し)

再就職したあと働き続けている女性のうち、これら4つの仕事満足を持つ人の割合を図表1に示した。仕事満足の種類によるが、「そう思う」と回答する人は約1~2割に対して、「どちらかと言うとそう思う」と回答する人は約4~5割を占めた。ただし、これからの働き方について自分なりの見通しを持てている人の割合は相対的に低く、先々のことを見通しにくい状況もうかがえる。

図表1 再就職後に働き続ける女性の仕事満足

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注:3年以上の離職期間を経て再就職し、調査時点で働き続けている首都圏および首都圏以外の政令指定都市に住む25~54歳の配偶者と子どものいる女性。
グラフ項目の数字は、四捨五入の関係で合計しても100%にならない場合がある。
出所:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」

離職期間中の学びは、再就職後の仕事満足と関わりが薄い

これら4つの仕事満足について、はっきり「そう思う」と言い切っている人は少ない。そこで、再就職後に働き続けている人のデータを用い、どのような状況や行動が、再就職後の仕事満足と関わりを持っているのかを分析した。図表2は、離職期間中の学びに関する変数、再就職時の仕事と家庭の両立負担に関わる変数についての結果を整理したものである。図表中の係数は、プラスである場合に仕事満足を持つことと正の関わりを持つことを、マイナスである場合に負の関りを持つことを意味している。統計的に意味のある結果がみられた場合にのみ、係数を記した。

まずは離職期間中の学びに着目する。ここで注目するのは、連載第2回(再就職前にどんな学びをしていると働き続けやすいか)と同じ以下の3つの学びである。

1. 仕事に役立つ知識やスキルのセミナーやスクールでの勉強(以下、スクール型の学び)
2. 参考書などを利用した、仕事に役立つ知識やスキルの独学での勉強(以下、独学による学び)
3. 大学や地方自治体が主催する講座への参加(以下、大学・自治体講座による学び)

分析結果によると、スクール型の学びは、再就職後の4つの仕事満足のいずれとも、有意な関りを確認できなかった。一方、離職期間中の独学による学びは、「持ち味活用」についてのみプラスの関りを持っていた。最後に、大学・自治体講座による学びは、4つの仕事満足すべてと関わりがみられなかった。全体に、離職期間中の学びは、再就職後の仕事満足と関わりを持ちにくいようである。
そのなかでも独学による学びが、「持ち味活用」に関わる仕事満足を高めていた背景を考察すると、学びの内容が影響している可能性がある。たとえば、わざわざ足を運ぶスクール型の学びは資格などの取得に関わるものが多い一方、独学による学びはオフィス事務やパソコン操作など、独学で学びやすい実務的な内容が多いと想定される。前者の学びを活かそうと思うと、経験不足や時間の制約が足かせになりやすいが、実務的な後者の学びは、オフィスワークなどですぐに活用することが可能である。このほか、大学・自治体講座による学びが4つの仕事満足と関わりを持たなかった背景として、この学びが、仕事を再開したり働き続けるところまではスコープに入れていても、その後に仕事満足を高めていく行動まではサポートできていない可能性がある。

図表2 離職期間中の学び、再就職時の両立負担と現在の仕事満足

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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

再就職時の両立負担を乗り越えると、違う景色がみえてくる

次に、仕事と家庭の両立負担に関わる変数に着目しよう。分析によれば、再就職時の週就業時間が40時間以上の場合に、「持ち味活用」に関わる仕事満足を持ちにくくしていたものの、再就職時の末子年齢、離職期間は4つの仕事満足と有意な関わりを持っていなかった。離職せずに働き続けている女性に限れば、再就職時に仕事と家庭の両立負担は、仕事満足を得ていくかどうかと関わりを持ちにくい状況にある。離職期間のある女性にとって、再就職後に仕事を続けられるかどうかがまずは重要であり、そのハードルを乗り越えると違う景色がみえてくると言えそうだ。

それではどのような要因が、再就職後の仕事満足を高めるのだろうか。次回は、再就職後に「どんな行動をしたか」に着目して、再就職後の仕事満足との関りを考える。

(※1)4つの仕事満足(「やりがい実感」「大切な仕事」「持ち味活用」「自分なりの働く見通し」)について、「当てはまる」(設問は「当てはまる」「どちらかと言うと当てはまる」「どちらかと言うと当てはまらない」「当てはまらない」の4件法)と回答した場合を1、それ以外の場合を0とする2値変数を目的変数とし、結婚・出産等で離職した仕事、居住地、教育歴、現在年齢、再就職時の仕事をコントロールしたうえで、離職期間中の学び、再就職時点の両立負担に関わる変数、再就職時点の夫の家事・育児への協力、再就職から現在までの仕事やキャリアについての相談状況、再就職後の4つの行動(「働く時間の拡大」「未経験の仕事挑戦」「新たな知識・スキルの習得」「今後の生き方・働き方の内省」)を考慮した2項ロジット分析を行った。