再就職後のキャリアに関わる情報が不足している

2019年12月17日

大きかった報告書への反応と、見えてきた「もう一つの課題」

リクルートワークス研究所は、2018年度に離職期間のある女性のキャリアに着目した研究プロジェクト(「ブランクからのキャリア再開発」)を実施し、その結果を報告書(「『ためしながら、つながりながら作る』わたしのキャリア」2019年3月)にとりまとめた。

この報告書では、当事者へのインタビューやアンケート調査に基づいて、離職期間を経て自分らしいキャリアを作ろうとする女性への提案と、女性の再就職支援に関わる方や地方自治体への提言を行った。なかでも後者の提言では、仕事を再開した後に、再び仕事を辞めてしまう女性が一定割合いることや、再就職後の行動がその後のキャリアと関りを持つことを踏まえ、離職期間のある女性が無理なく仕事を再開し、キャリアを再開発していくための支援のあり方を示した。

この報告書に対しては、合計で30近い県や市、ハローワーク、女性支援の拠点から反響をいただいた。その結果、窓口やセミナーでの当事者の女性への配布が実現したほか、リカレント教育の設計の参考にしていただいた。これからの支援策についての政策対話にもつながった。多くの関係者の方と対話するなかで、女性の再就職支援をより良いものへとアップデートしようにも、女性が仕事を再開したあとにどのような問題に直面しやすいのか、どうすれば自分らしいキャリアを築けるのかについて、参考にできる情報がまだまだ少ないことが分かった。

データと分析結果の紹介を通じて、離職期間のある女性のキャリアを支援するコラム

そこで、この連載(【分析編】再就職後の女性のキャリア ~データで読み解く「就業継続・仕事満足」~)では、データや分析結果の提供を通じて、「離職期間のある女性が、ふたたび自分らしいキャリアを作る」ことを支援していく。とりわけ、女性の就労支援に関わる方が、離職期間のある女性の中長期的なキャリアや地域経済での活躍を視野に入れた支援策を検討する際に、活用いただきたいと考えている。

分析に用いるデータは、リクルートワークス研究所が2018年12月に、3年以上の離職期間を経て再就職した女性3,000人に対して行った調査(「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」)の結果である。(※1)。

この調査の回答者には、再就職したあとに働き続けている人、残念ながら再び仕事を離れた人の両方が含まれる。さらに、仕事を再開する前にどのような学び直しをしたのか、再就職の時の子どもの年齢や夫の家事・育児への協力、仕事内容や働き方はどうだったのか、再就職後にキャリアに関わるどのような行動を取ったのか、現在の仕事にどのように満足しているのかなどについても尋ねている。ここから、①離職期間中、②再就職時、③再就職後の時間軸を念頭におきつつ、どの時点の、どのような行動や状況が、女性が再就職したあとに離職せず働き続けること、現在の仕事でやりがいを感じながら働くことや、将来の見通しを持って働くことと結びついているのかのヒントが得られる。

リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」

<調査対象>
- 首都圏と地方政令指定都市に居住する、社会人経験があり、夫と子どもがいる25~54歳の女性
- 結婚・出産、育児、夫の転勤等で離職したあと、現在に至るまでに3年以上仕事に就いていなかった期間があり、かつ、その後に仕事に就いた経験がある人
<割付>なし
<設問>年齢、教育歴、結婚・出産等で離職した仕事、離職した理由、離職期間、離職期間に行った学び、再就職する際に困ったこと、再就職した仕事、再就職時点の週就業時間、再就職した時の末子年齢、再就職した時の夫の家事・育児への協力、再就職後に取った行動、現在の仕事に対する意識、仕事全般に関する考え方等
<調査方法>
インターネットモニター調査(調査期間:2018年12月22~25日)、回答者数は3,000

次回はまず、離職期間中の学びに着目する。具体的には、仕事を再開する前にどのような種類の学び直しをしていると、再就職後も働き続けやすいのかを考える(※2)。

 

(※1)回答に矛盾のみられたケースおよび再就職の時点での週就業時間について不明であったサンプルを除き、分析に使用したケースは就業者・非就業者計で2,794である。
(※2)この連載の分析はWorks Discussion Paper Series No.28「再就職した女性の就業継続と仕事満足」をもとにしている。