イントロダクション

2020年12月17日

2021年4月からの改正高齢法は70歳定年制に

人生100年。かつては「55歳定年制」が定着していた日本もその後は60歳定年制、65歳までの雇用確保の時代を経て、いよいよ「70歳まで働く機会の確保」を企業の努力義務とした。改正高年齢者雇用安定法(以下、改正高齢法)などの関連法は既に成立し、2021年4月から適用される。 
高年齢者の働き手を増やし、人材不足への対応と、年金などの社会保障の担い手を増やす狙いもあり、終身現役により近づいた。政府は将来的に70歳定年制の義務化も視野に入れているという。

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「70歳まで企業との継続的な業務委託」が努力義務に

これまでの法律では、①定年延長、②再雇用などの継続雇用制度の導入、③定年廃止、という対応により、社員が65歳まで働ける機会をつくることを企業に対して義務づけていた。 
4月から施行される改正高齢法では、70歳までの高年齢者就業確保措置として、①~③に加えて、3つの創業支援等措置(雇用以外の措置)を努力義務とした。
新たに加わったのは、④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に「業務委託契約」を締結する制度の導入、⑤高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、企業自ら実施する社会貢献事業を実施する制度の導入、⑥企業が委託、出資(資金提供)などをする団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入、である。企業には計6つの選択肢が示され、これらは社員が70歳になるまで雇い続けるか、定年後は業務委託契約を結ぶか、社会貢献事業の支援をしてもらうかに大別でき、どれを選ぶかは企業と労働組合が決めるという仕組みである。

従業員(雇用契約)から社内フリーランス(業務委託契約)への移行

定年を迎える社員は収入が不安定になるおそれなどがあるため、改正高齢法では、企業に定年退職した元社員と継続的な業務委託契約を締結する制度の導入を求めている。具体的な方法は示されていないが、制度の導入は急務である。そこで、本コラムでは、改めて制度の主旨を理解するとともに、プロフェッショナル社員の独立や社内フリーランスへの移行制度などの萌芽事例や、業務委託契約時に必要とされる企業と元社員双方の期待役割の明確化と確認事項など、個人との業務委託制度を支えるビジネスなどの事例を紹介する。それらを参考に、新たな人事制度やサポートシステムなど、シニアプロフェッショナルが活躍できる少し先の未来モデルを考え、提案していきたい。

村田弘美(グローバルセンター長・主幹研究員)