明日から使える!「新しいアイデア」を考え出すテクニック 碇 邦生
ヒトは誰でも新しいアイデアを考えられる
【Question】
とある日の昼下がり、急にインスタント・ヌードルを食べたいとおもった貴方は近所のコンビニエンスストアに入りました。そこでふと目に留まった新商品が、ユニークで目新しかったため、思わず手に取って購入してしまいました。さて、このインスタント・ヌードルはどのような商品でしたか?
上の質問文を読んで、「野菜たっぷりヘルシー・ヌードル!」とおもった読者は、残念ながらこれまで新しいことを考える機会があまりなかったか、ダイエットの真っ最中であったか、のどちらかだろう。ちなみに、この答えは筆者がこれまで大学や企業研修で同様の質問を100以上繰り返してきて、最も多かった答えだ。新しいアイデアを考えてみましょうと前振りをしても、似たような発想が数多く出てしまうほど、新奇なアイデアを考え出すことは難しい。
このことは、そもそも学校教育や職場環境で「新しい何か」を考える思考よりも、論理的で批判的な思考が求められる場面が多いため、新しいアイデアを出すための訓練が日ごろからなされていないことが一因として考えられる。教育学者のケネス・ロビンソン氏は、2006年のTEDの講演で「学校が創造性を殺すのか? (Do schools kill creativity?)」というテーマでより詳細について語っている。
だが一方では、「新しいアイデアは、正しいテクニックを用いれば誰でも考え出すことができる」という考え方も心理学者の一派として存在する。代表的な人物ではブレーン・ストーミング法を世に広めたアレックス・オズボーン氏だ。オスボーン氏は、4つのルール(1. アイデアを批判しないこと、2. 自由奔放さを歓迎する、3. 量を出す、4. 結合や改善点を探索すること)を守ってブレーン・ストーミングを行うことで、新しいアイデアを出すことができると1953年に発行された自著の中で紹介している。以降、数多くの心理学者がアイデア創出テクニック法を生み出してきた。
新しいアイデアを生み出すためのキーとなる12要素
それでは、新しいアイデアを考え出すために、どのようなテクニックを用いればよいのか。残念ながら、数多あるテクニックすべてを紹介することは難しいが、先行研究によってアイデア創出テクニックには重要なキー要素があると示されている。
アリゾナ州立大学のシャー教授ら(2000年)によると、新しいアイデアを考え出すためのテクニックには12のキーとなる要素があると紹介されている。
<アイデア創出テクニックの12のキー要素>
1. 評価しない
2. アイデアの量を出す
3. アイデアのバラエティを豊かにする
4. 肌感覚のある問題やテーマについて考える
5. 異なる視点を取り入れる
6. 比喩表現を用いて、ありきたりのものを異なる視点で捉えなおす
7. 答えのない問題について考える
8. 物議を醸すような挑発的なテーマに挑戦する
9. ランダムで導き出した要素と結合させる
10. アイデアから一時離れて、温める
11. ルールや常識をあえて破る
12. より高度な問題に挑戦する
これらの12の要素を1度にすべて取り入れる必要はない。たとえば、先述したブレーン・ストーミングでは基本的には1と2の要素しか含まれていない。その他のテクニックに関しても、おおよそ3~5つの要素が含まれている程度だ。だが、これから新しいアイデアを考える際、これら12の要素を意識して取り入れてみることで、アイデアの質が向上することだろう。最後に、冒頭の質問にもう1度チャレンジしてもらいたい。貴方のアイデアに変化があっただろうか。
碇 邦生
[関連するコンテンツ]
- イノベーターを生み出すのは,誰か? ――『Works』連載「成功の本質」の再分析から
- 企業内事業創造人材の特性と成長(前編)