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第7回 投票率80%台を支える若者世代 本気の模擬投票で高まる政治意識

2024年04月10日

w183_nordic_main.jpg8つの政党のユース団体のメンバーが白熱した議論を交わした模擬選挙の討論会。討論会の後には、生徒たちに党のステッカーやカードを配りながら支持を訴えていた。
Photo=井上陽子

デンマークの学校で2024年、8-10年生(13-16 歳)の生徒約7万人が参加して模擬選挙が実施された。民主主義を実践的に教えるため、2015年からほぼ隔年で行われており、3週間にわたってさまざまな政治課題について学んだ後、最終日には投票が行われた。

デンマークの模擬選挙の特徴は、その“リアルさ”だろう。実際の投票ブースを使い、本物の投票用紙と同じ形式で実際の政党に票を投じ、開票は国会から中継するという形式面もあるが、各政党の「ユース団体」の活躍が大きい。ユース団体に所属するのは20代の若者だが、彼らが学校を訪れて、本物の選挙戦さながらに、党の立場を踏まえた白熱したディベートを繰り広げるのである。

ある学校の討論会をのぞいてみたところ、「(環境負荷の高い)肉製品の価格を上げるべきか」というテーマについて、本物の政治家顔負けの迫力で議論を交わしていた。その内容も「ミートソースパスタのような肉製品を多く食べる低所得者層の打撃をいかに減らすか」といった現実的なものだ。中学生相手だからと手を抜くことがないのは、模擬選挙で投票した党には、選挙権を得る18歳以降にも投票する可能性が高い、と見ているためでもある。討論会後も、生徒たちに政党のカードを配るなど、PRに余念がなかった。

教育現場に政治を持ち込むことに、日本人には違和感があるかもしれない。だがデンマークでは、本物に近づけることで、社会に目を向け、考えさせることを重視している。ある教師は「義務教育を終えるときには、自分の意見をしっかり主張でき、異なる意見も尊重できる、自立した人間を育てるのが目的だ」と話していた。その成果もあるのか、調査によれば、政治について家族や友人と話したり、過去1年に1度でも環境問題を意識して商品を選ぶといった政治的な行動を取ったりした若者(16-25歳)は77%に上り、上の世代よりも高いのだそうだ。

デンマークの投票率は84%(2022年総選挙)と、日本より30%近くも高い。高い投票率を支えるのが若者だ。20代でも投票率は70%を上回り、若者が投票するから政治家も若者の声を汲み取る好循環がある。ステージ上の20代が、聴衆の10代に政治課題を熱く語る討論会を見ていると、民主主義の盤石さを感じさせるのだ。

Text=井上陽子

プロフィール

井上陽子氏

Inoue Yoko
北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞でワシントン支局特派員など。現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。

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