AIによって仕事を奪われるのは誰か(2) 坂本貴志

2020年11月26日

前回の分析では、役職や雇用形態などに注目して、どのような人の仕事がAIによって代替されるのか、またはされないのかを探った。前回分析を行っている要素の他に、その人の仕事が定型的かどうか、また代替されやすいかどうかに極めて大きな影響を及ぼす要素が他にある。それは職種である。

代替されやすさの4つの区分

図1は、各職種を、その職が定型的な仕事が多い職なのか非定型的な仕事が多い職なのかということと、それが頭を使う職種なのか体を使う職種なのかということの2軸でマッピングした図となる。

この分類に従うとすれば、職業は以下の4つの区分に分けられる。第一に、ブルーカラーで代替されやすい(定型業務が多い)職種である。第二に、ホワイトカラーで代替されやすい職種。三番目がホワイトカラーで代替されにくい職種、四番目がブルーカラーで代替されにくい職種である。なお、ここでいうホワイトカラー/ブルーカラーは、頭を使うか体を使うかで分けており、一般的なその定義とはやや異なることに注意が必要である。

定型業務の割合と体を使う業務の割合は緩やかに正の相関があるため、ホワイトカラーで代替されやすい職種とブルーカラーで代替されにくい職種は相対的に少なくなってはいるが、比較的4つの区分にまんべんなく分布していることが見て取れる。

郵便配達、ドライバー、清掃、配達・倉庫作業などが代替可能

まずはブルーカラーで代替されやすい職種からみていくと、郵便配達・電話交換、ドライバー、清掃、配達・倉庫作業などが並んでいる。郵便配達や宅配、清掃といった作業は、毎日同じことを繰り返し行う側面が強い。このため、たとえばドローンの開発だとか、清掃用のAI掃除機などのさらなる開発が進めば、機械による代替は十分可能となる。

さらに、ドライバーも代替可能性が高い職種となった。自動運転の技術の進展に期待されるところだが、ドライバーの種類によってその代替可能性はやや異なる。すなわち、その他ドライバーやトラックドライバーは代替可能性が高いのだが、タクシードライバーは代替可能性が低いのである。

これはなぜだろうか。タクシードライバーの仕事は、客の要望に応じて目的地まで無事に送り届けることがその重要な任務となるが、状況に応じてどれが最短で送迎できる経路なのかを判断するのは、ドライバーの腕の見せ所である。

さらに、どの場所へ行けば客を見つけられる確率が高いか。そういったノウハウも売り上げに大きく影響するため、熟練したタクシードライバーはその時々の状況をみながら、臨機応変に仕事を行っている可能性がある。

こういった分析はAIが得意とするところだが、客を乗せたときに、その客と円滑にコミュニケーションを取ることもタクシードライバーが提供する重要なサービスとなる。提供するサービスの巧拙は、顧客の満足度に影響を与え、売り上げもそれによって変動するだろう。

一方で、トラックのドライバーやその他ドライバー(バスの運転手など)は、タクシードライバーよりも淡々と日々同じ仕事を行う側面が強いと考えられる。同じ運転手でも仕事の性質はやや異なるのである。

財務・会計・経理、一般事務、薬剤師なども代替できそう

ホワイトカラーで代替されやすい仕事もある。その筆頭は、財務・会計・経理である。この職種は比較的定型化された仕事が多く、将来代替される可能性が高い。公認会計士・税理士は同職種よりも高度な仕事を行っているとみられることから定型業務の比率はやや低くなったものの、それでもやはり代替可能性が高い区分に入った。

一般事務も比較的代替されやすいが、一般事務は最も職業人口の多い職種であり、多様な人がこの区分に該当している。同じ一般事務でもその人が部長なのか平社員なのかで職務は大きく違うし、正規雇用者か非正規雇用者かでも異なる。ただ、全体的な傾向としてはこの職種もやはり定型業務が多いということだろう。

最後に、薬剤師も定型業務が多い区分に入った。患者を診療し、どのような薬を処方するかを決めるのは医師である。薬剤師はその判断に基づいて、指示通りに薬を調合する側面が強いためだと考えられる。

最後に、代替されにくい職業はどのようなものか。それは、次回のコラムで検証していくこととしよう。

図1 職種のマッピング ※クリックで拡大します図1 職種のマッピング

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020」
注:回帰分析によって得られた係数を基に偏差値を算出し、マッピングしている。

坂本貴志(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。

 

※本コラムを引用・参照する際の出典は、以下となります。
坂本貴志(2020)「AIによって仕事を奪われるのは誰か(2)」リクルートワークス研究所編「全国就業実態パネル調査 日本の働き方を考える2020」Vol.3(https://www.works-i.com/column/jpsed2020/detail003.html)

 

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