育児や介護が、働く人々のストレスに与える影響とはなにか 孫亜文
働く人々が子どもを持ったとき、親の要介護認定を受けたとき、彼らはこれまでの働き方を大きく見直す必要に迫られる。子育てと介護は、想像以上に働く人々に大きなインパクトを与えるのだ。
新たな育児と介護の始まりは、働く人々が感じるストレスにどのような影響を与えるのか。
「全国就業実態パネル調査2017」を用いて、2016年の1年間に新たに子どもを持ったひとと新たに親・義親が要介護認定を受けたひとの仕事と家庭生活の両立ストレスの感じ方をみていくと、それ以外のひとに比べて強いストレスを感じていることがわかる(表1)。
表1 仕事と家庭生活の両立ストレスの感じ方
さらに、仕事と家庭生活の両立ストレスの原因についてみていくと、新たに子どもを持ったひとでは「子どもの世話」に加え、「子どもと過ごす時間の不足」「自分の時間の不足」「配偶者の非協力・無理解」「家計のやりくり」「掃除や片付け」や「食事の支度」など、育児とそれに伴う家事にまつわる事柄によってストレスが大きくなっていることがわかる(表2)。
表2 仕事と家庭生活の両立ストレスの原因
新たに子どもを持ったひとの割合(%)から
持たなかったひとの割合(%)を引いた差(高い順)
新たに親・義親が要介護認定を受けたひとの割合(%)から
受けなかったひとの割合(%)を引いた差(高い順)
新たに親・義親が要介護認定を受けたひとについても、「介護・家族の世話」に加え、「親・親戚との関係」「自分の時間の不足」「食事の支度」「自分の健康・美容・加齢」や「掃除や片付け」など介護に伴う家族との関係や家事によってストレスが大きくなっている。
しかし、新たに子どもを持ったひとはそれ以外のひとに比べて「子どもの世話」からストレスを感じる割合が27.3ポイント高くなるのに対し、新たに親・義親が要介護認定を受けたひとはそれ以外のひとに比べて「介護・家族の世話」からストレスを感じる割合は52.7ポイントと大幅に高くなっている。新たな介護の始まりは、新たな育児の始まりよりも、働く人々に与えるインパクトが大きいことがわかるだろう。
育児も介護も、それにまつわる家事や家族関係などを通じて、働く人々のストレスを増大させている。そのなかでも、私たちの予想を上回るほどに、働く人々が介護そのものから感じる心身の負担は大きい。それを理解したうえで、長時間労働の是正、育児・介護休業制度の充実など、育児しやすい労働環境を整え、介護が始まっても仕事と両立しやすい働き方のあり方を検討することが求められる。
孫亜文(リクルートワークス研究所 アシスタントリサーチャー)
※本稿は「働き方改革の進捗と評価」に掲載されているコラムの転載(一部調整)です。
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。