パート・アルバイトはどのような労働者か
一連のコラム「パート・アルバイトの現状を把握する」の最後に、パート・アルバイトの働き方や実態のうち、本研究の議論と関連する事項について確認していく。
若年層が減少し、高齢層が増加
図表1には、パート・アルバイトの性別・年齢別の構成割合を示した。総務省「就業構造基本調査」を用い2002年と2022年の男性と女性の構成割合をそれぞれみると、2002年時点ではパート・アルバイトに占める男性の割合が22.6%であったのに対し、同じく2022年時点では23.2%とほとんど変わらない。この20年間、性別の構成割合には大きな変化がないようだ。
年齢構成はどうか。男女ともに35歳未満の構成割合が低くなった。特に、女性の25~34歳は構成割合では半分ほどになっており、顕著な変化を示している。若年層とは対照的に、高年齢層の構成割合は高まった。男女ともに65~74歳の構成割合が上昇し、女性の場合は55~64歳でも高まっている(※1)。
図表1 パート・アルバイトの性別・年齢別構成割合
出所:総務省「就業構造基本調査(2022)」
短時間勤務者も多いが、正社員並みに働く人も多い
これ以降の分析は、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を主に用いる。図表2には雇用形態別の就業時間の構成を示した。正規雇用者は40時間以上の割合が8割以上、35時間以上では9割以上を占める。パート・アルバイト以外の非正規雇用者では短時間の割合が増し、30時間以上で5割以上、20時間以上30時間未満が2割、20時間未満が3割弱となっている。
パート・アルバイトは労働時間のばらつきがさらに大きい。30時間以上、20時間以上30時間未満、20時間未満がそれぞれ3分の1程度といった構成になっている。短時間で柔軟に働いている層もいる一方で、正社員並みの時間働いている層もおり、多様なことがわかる。
図表2 雇用形態別の週労働時間の分布
配偶者がいると就業調整する人が多い
パート・アルバイトとして就業する人の多様性を理解するうえでは、社会保険の適用状況を確認することも重要である。図表3には、配偶状態別の健康保険の加入状況の構成を示した。全体(総数)でみると、「自分で健康保険料を支払っていた」割合(43.1%)と「扶養家族として、家族の給与から健康保険料が天引きされていた」割合(40.8%)がほぼ拮抗していた。ただ、配偶者のいる人に限ると、半数以上が「扶養家族として、家族が支払っていた」。扶養(健康保険)あるいは第3号被保険者(年金保険)として働ける範囲内に就業調整する「年収の壁」が取り沙汰されることが多いが、実際に有配偶者と無配偶者では社会保険加入状況に大きな開きがあることからも、相当数の有配偶者が就業調整をしていると考えられる(※2) 。
図表3 パート・アルバイトの健康保険加入状況(保険料の負担)
出所:JPSED(2016-2023)
10年以上勤続者が約2割
最後に、勤続年数についてみてみよう。「就業構造基本調査(2022)」によれば、パート・アルバイトでも雇用期間の定めのない(無期雇用)者が39%にも上るという(佐藤 2023)。2013年施行の改正労働契約法の「無期転換ルール」が少なからず影響しているとみられる。パート・アルバイトの勤続期間が実際に長くなっているのであれば、長期勤続を見据えた人材育成・活用がより重要になるだろう。
そこで、勤続年数の分布をみてみると(図表4)、パート・アルバイトは10年以上、5年以上10年未満ともに2割程度となっており、正規雇用よりは短い傾向にあるもののパート・アルバイト以外の非正規雇用とは同程度の構成であった。
図表4 雇用形態別の勤続年数の分布
出所:JPSED(2016-2023)
(※1)この年齢別の構成割合の変化は、人口構成の要因が大きい。「就業構造基本調査」で確認すると、65~74歳人口(男女総数)は約1,358万人(2002年)から約1,687万人(2022年)と1.24倍となった。
(※2)佐藤(2023)においても、有配偶女性の「パート」の45%が就業調整しているとの指摘がある。
■参考文献
佐藤博樹(2023)「正社員として働く女性が増えているのか?―両立支援から活躍支援へ」『日本労働研究雑誌』No. 761,pp. 4-16.
小前 和智
東京理科大学理工学部工業化学科卒業、京都大学大学院工学研究科合成・生物科学専攻修了後、横浜市役所などを経て、2022年4月より現職。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。