第2章 ジョブ・アサインメント for リモートワーク

2020年03月27日

マネジメントプロセスの手順に従って8つのポイントを提示する。

Point1 《シミュレーション》 
仕事をアサインする前に見通しを立てる

目の前にメンバーがいない状態では、仕事をアサインする「前」にどこまでマネジャーが仕事に見通しを立てておけるかが極めて重要になってくる。ゴール(成果物や納期)があいまいなままメンバーに仕事の指示をだしてはいけない。モニタリングに限界があることを念頭に置き、どのような仕事が具体的に発生するのか、仕事の大まかな手順や勘所はどこかを見据えておく必要がある。

Point2 《サイズ調整》 
仕事の単位をやや小さめに区分して1つの仕事の納期を短めに設定する

アサインした仕事の納期が数カ月後というような長期になってしまうと、途中段階が見えなくなる。3カ月かかる仕事であれば、それをいくつかのパートに分け、1カ月や1週間を納期として仕事をアサインするようなサイズ調整が有効になる。またメンバーの適性や能力、自律度に応じて仕事内容を組み替えるなどの柔軟な対応が求められる。

Point3 《権限委譲》 
メンバーの自律度に合わせた適切な権限委譲を行う

仕事をアサインする際には、事前の打ち合わせを綿密に行って、できる限り権限委譲を行う。いちいち誰かに承認を取らなければ仕事が止まってしまう状態ではリモートワークの生産性は下がってしまう。自分自身で判断して進められるように仕立ててから仕事を渡すことは、自律を促すことにもつながるだろう。リモートワークに慣れていないメンバーに対しては、単純な仕事からはじめて徐々に高度な仕事へと広げていくような対応を検討したい。

Point4 《モニタリング》 
報連相に依存せず勘所をおさえたプッシュ型のモニタリングを行う

リモートワークでは、近くでさりげなく観察することは難しく、また、頻繁な報連相を求めることは望ましくない。あらかじめ想定した勘所にさしかかるタイミングで、「○○は終わった?」「△△はどうなった?」というように、具体的にマネジャーから確認するようなプッシュ型のモニタリングが有効である。報告を待っていると、うまく進んでいない仕事ほど、仕事が停滞して見えなくなってしまう危険があるからだ。権限委譲を前提としながら、最低限のモニタリングをするという発想である。

Point5 《互助》 
マネジャーの関与は最小限にしてメンバー同士の助け合いを促す

マネジャーとすべてのメンバーが1対1でつながっているのではなく、メンバー同士で、相談やアドバイスが機能していく体制を目指していく。お互いの進捗状況が見えるようになっていることでピア・プレッシャーが働く状態をつくることや、マネジャーの仕事の一部をメンバーに付与して、マネジャーの役割を部分的に補完してもらう状態が理想である。

Point6 《危機管理》 
リスクを感じる状態に至ったときには迷わず仕事を引き取る

リモートワークでは、顧客とのトラブルが発生した場合や、業務上の重要なエラーが発生した場合などには、通常のマネジメントよりも先手を打った状況確認やリカバリーが重要となる。すぐに状況共有ミーティングを設定し、マネジャーが一旦仕事を引き取り、マネジャーの責任の元に対処する、といったアクションが必要になる。その際はリモートを解除してリアルな場で最善策を検討することが望ましい。進捗状況が見えにくい状態なので、リモートではより敏感に介入しないと、深刻な事態に陥る危険がある。

Point7 《完了確認》 
終わりを明確にして仕事の空白を避ける

仕事の区切りを明確にして、終盤でだらだらと時間を消費してしまうことを避ける。ほぼ完了したという報告があった仕事についてはできる限り早く確認して、必要ならば手を加えて、完了を宣言する。これによってメンバーを労うとともに、次の仕事への移行をスムーズにする。

Point8 《成果共有》 
仕事の成果や上手くいった要因をすべてのメンバーでシェアする

よい成果があがったときには、チームメンバー全員に情報がシェアされるようにする。マネジャーがその仕事にひとこと解説を加えることも有効であろう。これはリモートワークで不足しがちな学習機会になるだけでなく、他者の仕事成果に関心を持つことで、チームの一体感を醸成することにもなる。


ジョブ・アサインメント for リモートワークは、リクルートワークス研究所が発表した「ジョブ・アサインメントモデル」と連関している。
それぞれのポイントはジョブ・アサインメントモデルの全32項目のうち、リモート・マネジメントにおいて特に重要な行動にひもづいており、内容をリモート・マネジメント用にアレンジしている。具体的な対応は下の表のとおりである。ジョブ・アサインメント for リモートワーク※クリックで拡大します

リクルートワークス研究所の「ジョブ・アサインメントモデル」の4Step、32項目のうち、16項目が、ジョブ・アサインメント for リモートワークに反映されている。ジョブ・アサインメントモデルの詳細はこちらから確認できる。