なぜ、いま、ジョブ・アサインメントなのか?

2017年11月22日

ついに、ジョブ・アサインメントをプロジェクト化

リクルートワークス研究所では、これまでも幾度となくマネジャーのジョブ・アサインメントの重要性について提言してきた。Works誌No.127(2014年12月)では「ジョブアサインの愛と論理」と題し、部下を育てるためのジョブ・アサインメントについて特集を組んだ。また、2016年には「生産性の持続的向上モデル」のなかで、マネジメント改革の中核としてのジョブ・アサインメントスキル向上を紹介した。そして2017年、ジョブ・アサインメントの研究プロジェクトを発足させた。

ところで、マネジャーはジョブ・アサインメントを行っているだろうか?
部下を持つマネジャーで、ジョブ・アサインメントを行っていない人などいないはずだ。ジョブ・アサインメントはマネジャーなら誰もが実施している基本的な行動だといってよい。

では、マネジャーはジョブ・アサインメントが上手くできているだろうか。
この問いに答えるのは、実はそう簡単ではない。いったい何を基準に「できている」かどうかを判断すればよいのだろうか。 誰にどの仕事を任せるか、判断に迷ったときに立ち戻るべき方法論はあるだろうか。どのような考えに基づいて部下に仕事を割り当てればよいか、これまでに教えてくれた人はいるだろうか。ことほど左様に、ジョブ・アサインメントというのは、その内容や方法が、解明されていない行動なのである。われわれのプロジェクトでは、ジョブ・アサインメントの方法論を確立することを目指している。

なぜ、ジョブ・アサインメントなのか?

そもそも、なぜジョブ・アサインメントが重要だとわれわれが考えているのかをここで説明したい。われわれがジョブ・アサインメントに注目する背景には、マネジメント環境が変化しているにもかかわらず、その変化に対応するための具体的なマネジメントスキルについての議論が置き去りになっているのではないか、という問題意識がある。

近年、長時間労働の是正やワークライフバランスの確保といった課題が、ますます大きく取り上げられている。また、非正規雇用の社員の割合はかつてなく高く、正社員の間でも、働く時間や場所に制約のある社員が増加している。外国人の部下を持つマネジャーも増加している。これらはひと昔前のマネジャーはほとんど直面することのなかった状況だ。そして、こうしたなかでも、マネジャーに対する成果達成のプレッシャーはますます高まっている。

マネジャーはこうした変化に適応しなくてはならない。いま求められているのは、業績を達成し続けるなかで部下を育成し、さらに生産性も向上させるマネジメントに他ならない。

われわれは、マネジャーがジョブ・アサインメントスキルを獲得することでこそ、こうしたマネジメントが可能になると考えている。マネジャーの中核となる仕事は日々の業務推進による組織目標の達成であるが、良いジョブ・アサインメントを実行することによって、より効率的に目標を達成することを可能にする。さらに、ジョブ・アサインメントのやり方次第では、部下の成長意欲を引き出して、仕事を通じた人材育成も実現できると考えている。そして、ジョブ・アサインメントを丁寧に実施することで無駄な仕事をなくし、組織の生産性向上も達成される。ジョブ・アサインメントの全体像や方法論を明らかにすれば、多様な成果を同時に達成するための具体的な方法がみえてくるのだ。

ジョブ・アサインメントプロジェクトの概要

本プロジェクトでは、ジョブ・アサインメントスキルの全体像を明らかにすることを目的に、まずはジョブ・アサインメントを定義することからスタートした。次に、定義に基づいて仮説となるジョブ・アサインメントモデルを構築し、仮説を検証するための調査を実施した。

一般的に、「ジョブ・アサインメント」とは「仕事の割り当て」を指す。しかし、今回のプロジェクトでは、ジョブ・アサインメントを「組織として達成すべき目標を踏まえ、部下に行わせる職務を具体化したうえで割り振り、その職務を達成するまで支援すること」と広くとらえ、仕事の割り振りの前後のプロセスも含めてこれを定義した。業績をはじめとした多様な成果を最大化するためには、ジョブ・アサインメントをひとつの点ではなく、一連のプロセスとしてとらえて、各プロセスのスキルを高めていくことが必須であると考えたからだ。

ジョブ・アサインメントの定義に基づいて構築したジョブ・アサインメントモデルの仮説が下の図である。ジョブ・アサインメントモデルは、大きくは「目標設定」「職務分担」「達成支援」「仕上げ・検証」の4つのステージからなる。それぞれのステージには2つのステップが存在する。各ステップにおける重要なポイントを抽出した。

図:ジョブ・アサインメントモデル

このようにジョブ・アサインメントモデルは8つのステップを一連のプロセスとしている。それぞれのステップに含まれているポイントを踏みつつ、この一連のプロセスをまわしていくことが良いジョブ・アサインメントである。このサイクルが業績を達成しつつ、人材育成も生産性向上も実現する好循環になるとき、現代に求められているマネジメントが実現可能になると考えた。次からはジョブ・アサインメントモデルの全容とその詳細について解説していく。

※図表の内容を更新したため、一部差し替えました(2019.1.18)