高齢者の社会参加の実態を探る
本研究プロジェクトでは、高齢者人口比率がますます上昇する未来において、労働供給が制約されることを予想している。このような未来においては、高齢であったとしても、すべての人が自身のできる範囲で無理なく社会の役に立つということを念頭におかなければならなくなる。人手不足が深刻化する将来において、社会的な活動に従事するシニアはますます増えていくと見込まれる。
一方で、そうはいっても、歳をとっても現役時代と同じように働くというのは多くの人にとって現実的ではない。また、現役世代の人にとっては、高齢期の無理のない社会活動がどういったものなのか想像することはなかなか難しい。そこで、今回、40名を超えるシニアの方々にヒアリングを行うことで、高齢になっても幸せな生活と両立できるような活動がどのようなものかを明らかにしている。
ヒアリングで明らかになった高齢期の活動の在り方
本ヒアリングについては無理なく社会の役に立つ活動を行っているシニアに対して行っており、その活動の具体的な内容から始めようと思ったきっかけ、やっている中でその活動のやりがいのあるところや大変なところなどを聞いている。ヒアリングに参加いただいた方々の具体的な仕事や活動の内容は図表1、2にまとめている。
まず、仕事については現役時代のような多額の給与を稼げる負荷の高い仕事というよりも、収入水準はそこまで高くなくても負荷の低い小さな仕事が望ましいと考えられる。高齢期の家計を展望すれば、扶養家族がいる世帯はまれであることから、消費水準は年金の給付に加えて月10万円程度あれば十分なケースも多い。たとえば、施設管理の仕事や負荷が軽い作業、ほかの労働者の補助的な仕事など、現役時代のような負荷が高い仕事でなくても、世の中に無理なく貢献する姿は将来においても好ましいものになるだろう。
図表1 ヒアリング参加者が行っていた仕事一覧
図表2 ヒアリング参加者が行っていた活動一覧
仕事以外のちょっとした活動も大切に
さらに、高齢期の生活を展望すれば、稼得収入を得る仕事以外の活動も含めて、活動の範囲が徐々に広がっていくことが望ましい。ヒアリングにおいて、複数の人が現在従事している活動として答えていたのは、町内会など地域における活動、家庭菜園などの農作業、マンションや公共施設の清掃・管理といったものである。
こうした活動に従事するきっかけは様々であるが、たとえば町内会やマンション管理組合で前任の長が引退した際に頼まれ引き受けたというような、人から働きかけられたことがきっかけになっているケース、また外に出て体を動かすためにとか地域の人とつながりを作るためにといったようなことがきっかけだったケース、単に暇だったからなんとなく始めたといったケースなどがあった。ヒアリングにおいては、何か大きな目標をもって始めたという人はあまりおらず、逆に言えば、何か背中を押してくれるような働きかけがあると、こうした活動が社会により広がっていくものと思われる。
高齢期に無理なくできる活動とは
仕事であれ、それ以外の活動であれ、労働供給社会においてはその人の年齢にかかわらず、こうした活動を広げていくような環境の創出が求められる。本コラムでは高齢期に無理なくできる活動の実態を明らかにしていこう。
執筆:坂本貴志(研究員/アナリスト)