現場仕事で柔軟な働き方はできないのか
現場仕事でテレワークはできないのか
働き方改革の流れに乗って、世の中ではテレワークなど柔軟な働き方の浸透が進んでいる。一方で、働き方改革はデスクワーカーの話で、警備、運輸、建設などの現場仕事ではテレワークなんかできない。そういう声を聞くこともある。しかし、現場での仕事だからといって柔軟な働き方は本当にできないのだろうか。
リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用い、職種別のテレワーク実施比率を見ると、ノンデスクワーカーのテレワーク実施比率は総じて低い(図表1)。ただ、逆に言えば、建設作業者のテレワーク実施比率7.3%をはじめ、少なくない現場作業者がテレワークを実施していることがわかる。
ノンデスクワーカーはそれぞれが現場での仕事を持っており、警備の現場や運転の現場などをテレワークに置き換えることはもちろんできない。その一方で、実はこうした人たちも勤務実績の記録や経費精算など、その周辺的な雑務を会社に戻って作業していることも多い。こうした業務をテレワークで行うことができれば、現場への直行直帰が可能となり、労働時間も相当削減することができるはずなのである。
図表1 職種別のテレワーク実施比率
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。
タスクの切り分けで労働時間の削減を
実際に、労働時間の内訳を見ると、ノンデスクワーカーは本来の担当業務以外の仕事で多くの時間を割いていることがわかる(図表2)。
とりわけ周辺業務にかける時間が長いのはドライバーである。タクシードライバーは週に平均17.5時間の手待ち時間が生まれているが、これはもちろんタクシーにおける客待ちの時間である。トラックドライバーも同7.6時間手待ち時間が生じており、客先での荷待ちなどに多くの時間を割いている。
建設作業者や警備員なども周辺的な雑務の時間と手待ち時間に相当の時間を割いている。ノンデスクワーカーでも、配達員や清掃員はその時間が短く、やはりタスクの切り分けがうまくいっていることが示唆されている。このようなデータからは、現場仕事の効率化を図るために、周辺的な業務は事務などほかの職種に任せるといったタスクの切り分けが必要であることがわかる。
図表2 週労働時間の内訳(職種別)
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。調査においては、仕事時間の全体を100とした場合に、①本来の担当業務で成果と直結している仕事、②周辺的な雑務、③待機や客待ち等の手待ち時間に分けて聞いており、そこから労働時間を推計して算出している。
テレワークを利用した直行直帰など、工夫はいくらでもできる
タスクを見直すことができれば、ノンデスクワーカーの長い労働時間を削減できる可能性がある。もちろんタクシーの客待ち時間をゼロにするといったようなことは非現実的であるものの、こういったタスクの切り分けによって周辺的な業務を削減していけば、労働時間が著しく長いトラックドライバーなどの職種であっても週40時間労働を実現することは十分に実現可能となる。
テレワークもこうした日々のタスクの見直しに有効である。先述のように、テレワークで直行直帰を徹底することができれば移動時間など周辺的な時間を削減することができる。実際に図表3は職種別にテレワークを実施している人と実施していない人の労働時間の平均値を比べたものである。
これを見ると、トラックドライバーではテレワークをしていない人の週労働時間が52.6時間である中、テレワークをしている人の週労働時間は46.0時間となっているなどテレワークを実施している人のほうが労働時間が短い傾向にある。テレワークをしている人としていない人では労働者の属性が大きく異なるため一概に比較することはできないものの、周辺的な業務をテレワークで行うことができれば、移動時間などを節約することで労働時間を引き下げる効果はあると考えられる。
「現場があるのでできない」。そうではなくて、改革の遅れている現場の仕事だからこそ工夫の余地がある。警備、運輸、建設などの現場を持つ仕事であっても、各企業が一歩一歩柔軟な働き方を実現するための施策を講じることで、より魅力ある職にすることはできるはずだ。
図表3 テレワークの有無別の週労働時間(職種別)
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。
執筆:坂本貴志