ノンデスクワーカーの働き方 ー長時間労働だけが問題かー

2021年12月16日

平均週労働時間が長い

警備員やドライバー、建設作業者の働き方の状況を分析してみよう。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」から平均の週労働時間を算出したものが以下のグラフになる(図表1)。これを見ると、総じてノンデスクワーカーの労働時間は一般事務などの仕事に比べて長いことが理解できる。

特に長時間労働が常態化しているのは、トラックドライバー(平均週労働時間:52.4時間)やタクシードライバー(同:50.0時間)である。全職種の平均労働時間は36.0時間であるため、それよりも4割前後も長いことになる。警備員(同:40.7時間)や建設作業者(同:43.9時間)もこれらの職種と同様に労働時間が長い傾向がある。

こうした中、配達員や清掃員の平均労働時間は全職種平均よりも著しく短くなっている。配達員や清掃員に関しては、ノンデスクワーカーの中では有効求人倍率が低い傾向にある。こうした職種が一定の人手を確保できているのは、長時間労働を行わなくてすむという事情が職種の魅力度を高める一因となっているためではないかと推察される。

図表1 職種別の平均週労働時間
図表1 職種別の平均週労働時間出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

短時間労働が叶わないことも問題

さらに、平均労働時間が長いからといって、長時間労働だけが問題だと思うのは早計である。

図表2は週労働時間の分布を見たものであるが、トラックドライバー(週60時間以上の労働者の比率:38.2%)やタクシードライバー(同:33.4%)、建設作業者(同:10.5%)など長時間労働をしている者の比率が著しく高い。

そしてそれと同様に、短時間労働者の割合も著しく少ない。週34時間以内の労働者の比率はトラックドライバーが7.8%、タクシードライバーが11.0%、建設作業者が14.0%、警備員が23.5%などである。

このような状況は、ノンデスクワーカーの人手不足に大きな影響を及ぼしているものと考えられる。長時間労働の蔓延が持続可能な働き方をしたい人にとって障害になるのはもちろんのこと、短い時間での仕事がないということは、昨今労働市場で増えている高齢者や女性など短時間労働を希望する人の就労が叶わないということもあるからである。


図表2 職種別の週労働時間の分布
図表2 職種別の週労働時間の分布出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

休暇取得、社会保険の加入なども改善の余地あり

休暇の取得状況を職種別に算出すると、あらかじめ決まった休日のすべてを休めたという人は建設作業者(28.9%)、トラックドライバー(32.6%)、警備員(38.3%)などが全職種平均(48.5%)を大幅に下回っている(図表3)。休暇がとれなかったと答えている人の割合もトラックドライバーが17.1%、建設作業者が14.6%となっている。

有給休暇の取得率も、やはり建設作業者とトラックドライバーの環境改善の遅れが目立つ結果となっている(図表4)。有給休暇はないと答えている建設作業者は46.9%と半数に迫る水準となっており、トラックドライバーも有給休暇はない、あまりとれなかったを合わせて60.0%と全職種平均を大幅に上回っている。

最後に社会保険の加入状況を見てみよう(図表5)。配達員や清掃員に関しては自身で社会保険料を払っている人の割合は低いが、これは配偶者の扶養に入っている人は自身で社会保険料を支払う必要はないことから、そうした家族構成の人が多いのだと考えられる。他方で、自身が払っていないケースやわからないケースは一般事務がその比率は合わせて3.9%と低いものの、ノンデスクワーカーは総じて高い比率になっていることがわかる。

以上のように、ノンデスクワーカーの働き方に関する問題点は多く残っている。こうした職種が求職者から敬遠されることに対して単にイメージが悪いと嘆くのではなく、個々の企業が労働環境を改善していく努力が必要とされているのだと考えるべきではないか。

図表3 休暇の取得状況
図表3 休暇の取得状況出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

図表4 有給休暇の取得状況
図表4 有給休暇の取得状況出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値。

図表5 社会保障制度の加入状況
図表5 社会保障制度の加入状況出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:健康保険制度の加入状況を表している。2019年の数値。

執筆:坂本貴志