緊急事態宣言下 テレワークはどこで進んだのか 萩原牧子
緊急事態宣言下での働き方の変化を把握すべく、「全国就業実態パネル調査2020」(2020年1月実査)の回答者のうち、2019年12月時点で働いていた者に対して臨時追跡調査を行った(注)。本調査のメリットは、同一個人を追跡調査していることで、変化を把握できることにある。本コラムで、集計結果を切り出し、報告していきたい。
まずは、緊急事態宣言下で、雇用されて働く者のテレワークの実態についてみていく。「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて職場からテレワークを推奨された」のは、雇用者全体の17.1%であり、緊急事態宣言の期間が長かった7都府県(東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡)で23.4%(約4人に1人)であった(図表1)。
業種別にみると、その割合は、情報通信業が47.2%と抜きん出て高く、不動産業(27.4%)、教育・学習支援(27.4%)、金融・保険業(24.8%)と続く。一方で低いのは、郵便(3.4%)、医療・福祉(3.7%)、飲食店、宿泊業(4.4%)であり、それらは、私たちの社会生活を支えるエッセンシャル業種であることが確認できる。
図表1 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて職場からテレワークを推奨された人の割合(%)
注)集計対象は12月時点の仕事継続者かつ雇用者、ウエイト(XA20TC)集計
続いて、実際の1週間のテレワーク時間を、昨年12月時点と緊急事態宣言下で比較する(図表2)。まず、「0時間」の割合、つまり、テレワークをまったくしていない割合をみると、12月時点では雇用者の93.5%と9割を超えていたのが、宣言下では73.6%まで減少している。つまり、宣言前には6.5%しかテレワークを行っていなかったのが、宣言下では26.4%と、約4人に1人が行っている。7都府県では、92.2%(12月時点)から64.4%(宣言下)に減少し、宣言下では35.6%がテレワークを行っている。
テレワークを実施していても、その時間には幅がある。緊急事態宣言下に「40時間以上」という、週5日終日テレワーク状態であった割合をみると、雇用者の8.8%、7都府県で13.1%であった。
図表2 1週間のテレワーク時間の変化(2019年12月時点と緊急事態宣言下の比較)
注)集計対象は12月時点の仕事継続者かつ雇用者(どちらか一方でも休業した者を除く)、ウエイト(XA20TC)集計、 2%未満の数値は非表示
最後に、業種別の傾向もみておく(図表3)。緊急事態宣言下でのテレワーク時間が「0時間(=テレワークをまったくしていない)」の割合と「40時間以上(=週5日終日テレワーク)」の割合をみると、情報通信業(43.3%、30.7%)がテレワークの実施率も週5日終日テレワーク率も抜きん出ており、教育・学習支援(51.4%、10.7%)、金融・保険業(58.9%、11.4%)、不動産業(66.3%、7.8%)と続く。一方で、運輸業(85.3%、4.0%)、卸売・小売業(82.5%、4.0%)、飲食店、宿泊業(83.8%、4.1%)、医療・福祉(89.1%、4.5%)、郵便(79.7%、5.8%)は、宣言下でも8割前後がテレワーク「0時間」である。
図表3 業種別テレワーク時間の変化(2019年12月時点と緊急事態宣言下の比較)
注)集計対象は12月時点の仕事継続者かつ雇用者(どちらか一方でも休業した者を除く)、ウエイト(XA20TC)集計、2%未満の数値は非表示
新型コロナウイルス感染症の予防のために、テレワークという働き方が一気に進んだといわれるが、その実態は、エリアや業種によって、大きな違いがあることが確認できた。一方で、同じエリアや業種でも、その実施状態には差があることにも留意が必要だろう。例えば、他の業種に比べて、突出してテレワークが活用されていた情報通信業であっても、43.3%はテレワークが「0時間」だったのである。
続くコラムでは、エリアや業種以外での、テレワークの実施を可能にする要素を探索的に検証していきたい。
注 調査対象や設計など「全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査」詳細については、以下を参照。
https://www.works-i.com/surveys/report/jpsed2020_rinji.html
萩原牧子(リクルートワークス研究所/調査設計・解析センター長)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。