社会人の学習行動尺度ならびに学びへの態度尺度の作成と相互関連性の検討 高田治樹・辰巳哲子

2019年08月23日発行

本研究は、これまで研修や経験学習などの習得目標のある学習行動への着目が中心だった社会人の学習について、習得目標のない課題に向かうための学習行動に着目し、社会人の日常的な学習行動尺度ならびに学びへの態度尺度を作成し、相互関連性を検討した。

分析の結果、社会人の学習行動は、仕事の中での実践による学びを表す「経験型学習」、自分自身の働き方や価値を考える学びを表す「内省型学習」、社内外の人々との交流による学びを表す「対人型学習」、社内外のセミナーや研修に参加する学びを表す「学校型学習」の4因子に分類された。また、学びへの態度は、新たな学びを生み出そうとする態度である「学びの創造」、学びを実践する場所をつくるようにする「学びの実践」、普段から新たな知識やスキルを身につけようとする態度である「学びの習慣」、体系立てて学びたいテーマを保有している「学びの目標」の4因子に分類された。さらに、学びへの態度が学習行動に及ぼす影響を検討した結果、「学びの目標」が、「内省型学習」「対人型学習」「学校型学習」を促進し、「学びの習慣」は「経験型学習」と「内省型学習」を促進し、「学びの実践」は「内省型学習」と「学校型学習」を促進していた。

本研究で、社会人の学習行動と学びへの態度を測定する尺度を作成し、学習行動を促す学びへの態度の種類を明らかにしたことは、社会人の学びの実態を測定できる有用な指標を開発するとともに、学習の取り組みを試みる企業や個人にとって有益な知見になったと考えられる。