ジョージ・ワシントン大学が「インターンシップに最も適した大学」に選ばれた理由
ジョージ・ワシントン大学(以下「GW大」)は2015年、プリンストン・レビューにより、インターンシップに最適な大学ランキングの1位に選ばれた※1。その理由を同大学キャリアセンターのマイケル・マッケンジー氏にうかがったところ、ロケーション、優秀な学生、大学全体によるサポートといった要因が浮かび上がった。
米国/国際政治の中枢に位置し、インターンシップの機会が豊富
GW大が評価された理由は、米国・国際政治の中心、首都ワシントンD.C.に位置していることが大きい。ホワイトハウスはメインキャンパスからわずか4ブロックの距離、さらに各省庁や世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際機関も周辺に点在していて、インターンシップの機会が豊富なことで知られる都市です。当校には政府関連機関や国際機関の職員が非常勤講師を務めるクラスがあり、こうした講師陣はそれぞれが活躍する分野で信頼されているうえ、アカデミックな知識を実践的なスキルとしていかに活かすかも熟知しています。
多くの有名企業が求める、学生の積極性
もう一つの理由は、学生の優秀さ。学生は、単に勉強熱心なだけではなく、公共的活動に参加し、コミュニティーに還元する姿勢を有しています。通常は学位取得に必須ではありませんが、積極的にインターンシップに参加しています※2。優秀な学生を求めて、公的機関以外にも、Google、Facebook、一流コンサルティング企業まで、様々な民間企業がキャンパスを訪れます。中には、自らの知名度アップや採用目的の他に、学生に業界知識を与えることで、勉学と将来のキャリアを結びつける支援に熱心な雇用主もいます。
教授陣、キャリアコーチ、卒業生が一丸となって学生を後押し
3つめの理由は、学生に対するサポート体制が充実していること。教授陣は、学生がインターンシップ機会を得る手助けをすることに積極的です。特定の業界や分野で信頼が厚い教授からのレファランスがあると、雇用主の学生に対する信頼感がアップし、よりよいインターンシップ機会に恵まれます※3。それ以外にも、様々な業界・分野で活躍している卒業生、保護者、さらには大学の評議会もインターンシップ機会を我々に紹介してくれます。
さらに、学長がキャリアサービスに投資してくれたことで、キャリアサービスの人員体制が整い、現在30名強のスタッフが勤務しています。多くのリソースを確保できているおかげで、学部側との協力体制の強化を共に模索する時間を作れるようになりました。学生のために動こうという体制ができあがっていることが、GW大の強みだと思います。
キャリア探索コーチと業界コーチが学生の進路決定をサポート
GW大のキャリアサービスのユニークな制度では、キャリア探索コーチと業界コーチがあります。キャリア探索コーチは、学生自身が何をやりたいのかを明確にするサポートをします。自己分析、様々な業界をリサーチする方法、そこで明らかになった各業界の特徴を自らのスキル、価値観、興味といかに一致させていくかの手助けをするのです。特にリベラルアーツ学部は職業との結びつきが必ずしも明確でないため、個人レベルでの支援が必要です。また、インターンシップ先で責任ある仕事が与えられない、やりたい仕事ができないと悩んでいる学生に対して、上司などとのコミュニケーション方法についてアドバイスもします。その他にも、キャンパス内外のエントリーレベルの仕事を学生に斡旋し、仕事に求められる基本的なスキルを身に付けるサポートもしています。
それに対して業界コーチは、これまでの経験や人脈を基に、特定の業界での就職活動の進め方や、その業界に進むとどんな環境に身を置くことになるのかなど、マンツーマンあるいはグループでのコーチングを行い、学生の業界理解を促進します。また、昨年私たちは"インダストリーウイーク"と銘打って、特定の業界に焦点を当てた共催プログラムを実施し、学生の業界理解の促進を図りました。米国では新卒者にも即戦力を求めるため、学生が志望業界に進むためには、どの業界でも汎用できるスキル以外に、業界特定的なスキル、専門用語の知識などが必要です。そのためには、業界の理解を深めるこうしたプログラムは有用ですし、さらに、インターンシップに参加すれば、現場に身を置くことで生きた業界知識を身に付けることができます。
起業への関心の高まり、将来の進路に早く目を向ける必要性
最近のトレンドとしては、学生の起業に対する関心の高まりがあります。インターンシップでもスタートアップ企業で働く学生がおり、いつかは自分でも起業をしてみたいという学生や、スタートアップ企業で働くとはどういうことなのか体験したいという学生もいます。
我々キャリアサービスの今後の課題としては、学生に就職についてもう少し早く考えてもらえるような働きかけが挙げられます。志望業界を絞り、理解促進を早期にスタートできる支援が重要です。どの程度"早期に"就職を意識して動き始めるべきかは業界によって様々ですが、コンピューターサイエンス、工学、金融、コンサルティング業界は多様なスキル育成や経験を重視するため、特に早期に進路決定を行って準備を始めなければいけません。2年生の時にインターンシップで初めて雇用主と接触し、3年生でも再び戻ってきてもらいたいと希望される、そういう学生ならば、最終的に正社員として採用される可能性があると思います。
※1 米プリンストン・レビュー『Top Internship Opportunities
※2 2013年卒業生のインターンシップ/Co-op(産学協同教育)参加率は、69%
http://survey.gwu.edu/graduation(2015年7月6日アクセス)
※3 米国の採用選考では、応募者を指導したことのある教授や過去の雇用主などによる推薦を必要とする。
※4 U.S. News & World Report 『Best Colleges: National University Rankings』
INTERVIEW=石川ルチア
TEXT=小林誠一
プロフィール
ジョージ・ワシントン大学
プロフィール
マイケル・マッケンジー氏
キャリアコーチによる学生への支援サービス部門の責任者を務める。GW大に勤務する以前は、ジョンズ・ホプキンズ大学キャリアセンターに勤務する他、アゼルバイジャンの大学でキャリアコーチとして活躍していた。また、日本で、企業の従業員を対象に米国の大学院進学準備コースの講師を務めていた経歴も有する。