新卒者向けジョブサイトの専門家が見た、インターンシップ最新事情
1996年からエントリーレベルの求人情報をネットで提供している米国のジョブボード(求人情報サイト)の草分け的存在、College Recruiter。創設者/オーナーのスティーヴン・ロスバーグ氏に、米国におけるインターンシップと、インターン生採用支援サービスの最新事情をうかがった。
5年前と比較して、インターンシップ機会は大幅に増加
私は、大学生と新卒者向けのジョブボードを1990年代中盤に立ち上げて以来、米国におけるインターン生採用を巡る状勢の変化を見てきました。5年前と比較すると、インターンシップ機会が大幅に増大しています。当時、フォーチュン誌1,000社や連邦政府機関にインターン生募集の広告を掲載しないかと持ちかけても、大多数(おそらく60%)は、そうした求人はないという回答でした。
しかし現在では、80%以上のフォーチュン誌1,000社企業と連邦政府機関が公式の大学卒業者採用プログラムと予算を有しており、インターン生及び新卒者を雇用しています。それに伴い、インターン生採用に予算を割り当てる雇用主側の意欲も大きく増しています。College Recruiterにおける有効な求人情報のうち在学中、または卒業したばかりの学生を対象にした募集案件数は、10万件近くあるのではないかと思います。
ビデオコンテンツ、編集記事、アラート機能が当社サイトの特徴
College Recruiterの特徴の1つは、大手クライアントの多数が、求人ページにビデオを掲載していることです。事業内容や企業文化、社員紹介などのコンテンツは、文章よりもビデオのほうがはるかに訴求力が高くなります。
2つ目の特徴は、記事、ブログなど求人情報以外のコンテンツが充実していることです。コンテンツは3万ページ以上あり、履歴書サンプル、ネットワーキングに関するアドバイスなどを提供しています。キャリアセンターを利用しない学生は就職活動の仕方を知らないまま卒業してしまいますが、当サイトで多くのコツを学べるようになっています。
3つ目の有用な特徴は、ジョブマッチアラート機能です。求職者の興味・関心と一致する新着求人情報を、eメールで日に一度知らせます。アラート機能には学習能力があり、求職者がどの求人情報をクリックするかによってマッチングが次第に的確になっていきます。
また、特定のターゲットにeメール、バナーを通じてアプローチすることも可能です。たとえば、中核大学80校の会計または財務専攻の3~4年生で、非白人の軍人または障害がある人など、属性を絞って候補者にアプローチできます。
その他のインターンシップ/大学生向け求人情報サイト
当サイト以外のインターンシップ求人情報掲載サイトとしては、Chegg社所有のInternships.comや※1、InternMatchが挙げられます。双方ともに、インターンシップ求人情報を主体に、エントリーレベルの求人を掲載しています。
大学生採用支援に特化したサービスを提供する企業では、CSO Researchがあります。同社は直接ジョブボードを運営するのではなく、各大学にジョブボードソフトウェアを提供します。ジョブボードは各大学が運営し、求人情報を掲載する仕組みです。NACElinkも同類のサービスで、オーナーのSimplicity社がNACE(全米大学就職協議会)と協働して、各大学のキャリアセンターにジョブボードソフトウェアを提供しています※2。
新卒者対象のその他のサイトには、Simplicity社が買収したExperience.comとAfterCollegeがあります。前者の今後のサービス展開は現時点では明らかではありませんが、後者は、新卒かどうかにかかわらず、大卒者をターゲットとしている点が特徴です。同社は、各大学のキャリアセンターではなく学生団体や学部と協働している点が面白いビジネスモデルであり、マッチングテクノロジーに重点的に投資しています。
ジョブボード活用の大きな理由は採用コストの低さ
トップ企業がジョブボードを利用する理由は、何と言ってもコストの低さです。College Recruiter経由の採用コストを開示してくれる企業によれば、ジョブボード、新聞、テレビ、ラジオなどのメディア経由の採用コストは、オンキャンパスでの採用活動で類似の人材を採用するよりも通常はるかに低くなっています。
NACEの調査でも、オンキャンパスリクルーティングの1人当たりの採用コストは平均で3,600ドルを超えています※3。それに対して、当サイトを利用する雇用主の採用コスト(広告出稿費のみ)は、1人当たり通常100~250ドルになると思います。オンキャンパスリクルーティングにはリクルーターの時間費用なども含まれるため、単純な比較はできません。しかし、そうした費用を含めても、当社サイト利用者の採用コストははるかに低いと思います。
大学のキャリアセンターを利用する学生は、一般に少数派
雇用主がジョブボードを利用する2番目の理由は、オンキャンパスリクルーティング経由の学生とは異なる候補者にアプローチできることです。大多数の学校では、学生はキャリアセンターを利用せず、家族や友人、Linkedln、ジョブボードを利用して就職活動を行います。オンキャンパスリクルーティングを通じて就職活動をする学生の割合は、15~20%にとどまるでしょう。
ただし、NYU(ニューヨーク大学)のように、予算が潤沢で充実したサービスを提供するキャリアセンターもあります。そのような大学では、キャリアセンター経由で就職活動を展開する学生の割合は一般よりもはるかに高いと思います。
優れたインターンシップを有する組織は、正社員登用率75%が目標
インターンシッププログラムをうまく運営できれば、雇用主にとっても求職者にとっても、利益はきわめて大きいです。それは要するにテンプ・トゥー・パームの採用手法で、雇用主と求職者が一定の期間お互いの適性を試します。マッチングがうまく行けばそれでよいし、うまく行かなくても悪感情を残すことはありません。
優れたインターンシッププログラムを有する米国の組織は、インターン生から正社員への登用率で約75%を目標にしています。この数字を達成できる組織は少ないですが、目標はそのくらい高く置いているということです。インターン生を安価な労働力としてしか利用しない組織の正社員登用率は、10~20%にとどまるでしょう。その場合、優秀だと分かっている人材の採用機会を大きく損ねていることになります。
※1 Chegg Inc.は、2005年設立のニューヨーク株式市場上場企業。大学進学希望者及び大学生向けに、教科書の販売・レンタル・買い戻しサービス、大学進学支援サービス、大学生向け学習支援サービス、そして、インターンシップ検索などの多彩なサービスを提供している。
※2 1,200以上の教育機関に対して、学生の受け入れ、学業管理、学生向けサービス業務を合理化し、学生(顧客)体験価値の向上を図るソフトウェアを提供する。フォーチュン500社をはじめとする主要企業には、OneStopと称する大学生採用業務向けソフトウェアを提供している。
※3 NACE 『2014 Recruiting Benchmarks Survey』
取材協力 = CareerXroads
TEXT = 小林誠一
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スティーヴン・ロスバーグ氏