同期との交流機会が「人から学ぶ」行為を促進する
第3回の今回は、コロナ下で入社した新入社員の「他者から学ぶ」学習行動を取り上げ、それを促進する同期との交流機会を明らかにする。
解決できない問題への対処行動
まず、「他者から学ぶ」行為について、入社年度による違いを見ていこう。自分だけでは解決できない問題が起こった時に、うまく周囲の人の力を借りながら対処できているのだろうか。入社年度ごとに図表1の項目について平均値を比較した。結果からは、入社年度による統計的に有意な違いは確認されていない。
図表1 自分だけでは解決できない問題が起こった時の対処行動(入社年度別)
新入社員として入社すると、日々相談の連続だ。にもかかわらず、2020年度入社者のうち、「人に相談することはない」に「とてもそう思う」「そう思う」と回答したのは、24.3%で、約4分の1の者が、他者への相談をしていないことが明らかになっている(図表2)。
図表2 「人に相談することはない」の回答比率(2020年度入社者、%)
同期との交流と対処行動の関係
次に、同期との交流の視点から対処行動を見ていこう。
同期との関係性については、2つの指標で分析を行った。仕事場面での交流(ONの交流)と仕事以外の場面での交流(OFFの交流)である。ONの交流は、「同期と一緒に仕事をしているか」「同期に仕事の進め方について相談することがあるか」を尋ねた。合計スコアの高群・低群で比較をしたのが図表3だ。
図表3 ONの交流と対処行動の関係
この結果からは、同期とのONの交流が多い群のほうが、他者から学ぶために必要な「失敗やわからないことを話す」「話すことでヒントやアイデアを得る」「わからないことを調べたり人に聞いたりする」といった、他者への働きかけが行われており、「人に相談する」行為にも差があることがわかる。
OFFの交流は、「一緒に研修を受けたことがあるか」「仕事とは関係のないプライベートな場で話したことがあるか」「オンラインの飲み会をしたことがあるか」を尋ねた。合計スコアの高群・低群で比較をしたのが図表4だ。
図表4 OFFの交流と対処行動の関係 この結果からは、同期とのOFFの交流についても交流が多い群のほうが、他者から学ぶために必要な「失敗やわからないことを話す」「話すことでヒントやアイデアを得る」「わからないことを調べたり人に聞いたりする」といった、他者への働きかけが行われていることがわかる。一方で、「人に相談する」行為については大きな差は確認されていない。
これらのデータから明らかになったのは、同期との交流が、他者から学ぶ行為の違いを生んでいるという点だ。同期との交流機会があることによって、自身の経験やスキル、仕事の状況を相対化して見ることが可能になり、同期との間のスキルギャップを埋めようとする行動が生まれるのではないだろうか。
テレワーク環境が増えるにつれて、メンバーが何に困っているのかが見えづらくなり、育成に必要な介入のタイミングを逃してしまうこともあるだろう。新人時代の同期とのON /OFFの交流機会をつくること、「他者に相談する」行動を促すためには特にONの機会、すなわち、同期との仕事の機会をつくり、仕事の進め方を同期に相談できるような機会を設けることが必要だ。
辰巳哲子