統計が物申す

みずからの都合を優先して働く非正規雇用者

2020年04月10日

「労働力調査」

1947年より本格的に実施されている、我が国における就業および不就業の状態を明らかにすることを目的とした調査。毎月の就労などの状況を把握する基本集計と、四半期ごとの状況を把握する詳細集計の2種類があり、非正規雇用者の動向については主に詳細集計で把握されている。

 

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非正規雇用者の増加が指摘されるようになって久しい。
労働力調査では、労働者の正規・非正規雇用の別を把握しているほか、非正規雇用者を対象にその職についた理由を聴取している。理由別の内訳を公表した2013年からの状況をみると、同年の1909万人から2019年の2165万人へと、非正規雇用者数が漸増していることと同時に、理由の構成にも変化があることが確認できる。「自分の都合のよい時間に働きたい」が2013年の430万人から2019年の625万人へと増加するなど、非正規雇用者として働くことをみずから望んでいる人が増えているのである。一方、「正規の職員・従業員の仕事がない」という理由で非正規雇用者として働く、いわゆる「不本意非正規」の雇用者数は341万人から236万人へと減少を続けている。
非正規雇用の拡大をどのように評価するのかは、難しい問題である。しかし、労働力調査の結果をみれば、少なくとも非正規雇用が拡大した原因のすべてが企業側にあると考えるのは適切でないことがわかる。みずからの都合を優先したい労働者と正規雇用に伴う過度な責任を回避したい企業との思惑が合致した結果が、現代の非正規雇用者の増加の背景にあるのだ。
今、無期転換ルールの導入など、非正規雇用者を正規雇用者へと転換させることがこれまで以上に強く求められるようになっている。しかし、非正規という働き方をみずから望む人が一定数いる限り、すべての雇用者を正規雇用にすることが必ずしも望ましいとはいえないはずだ。データが示しているのは、就労の形をどうするかの選択権が使用者から個人へ移りつつあるという潮流なのだと考えるべきだ。
そして、この前提のもと、企業は堂々と非正規雇用者を活用すればよい。そのとき注力すべきは、その企業での仕事や待遇などを十分に説明し、非正規であっても本人が望む働き方を提供できることを理解してもらうことだろう。企業も個人も、正規雇用のほうが優れた働き方だという感覚から脱却し、非正規雇用という働き方をもっと活かすべきだ。

Text=坂本貴志