統計が物申す

増える、昼休みに仕事をする人々

2018年12月10日

「社会生活基本調査」

全国の10歳以上の人の生活時間の配分などを明らかにすることを目的とした調査。1976年から5年おきに実施しており、2016年調査で9回目となる。

総務省「社会生活基本調査」は、働く人の生活時間を15分単位で把握できる貴重な統計である。本調査によって、全国の人がどのような時間に働いているのか、その実態を知ることができる。ここでは、この5年間で、各時間帯に仕事をしている人の割合がどのように変わったのかをみてみよう。
上図はその移り変わりをみたものだ。ほとんどの時間帯で仕事をしていた人の割合が減っていることがわかる。たとえば20時台に仕事していた人の割合は1時間の平均で、14.8%(2011年)から13.8%(2016年)と5年間で1.0%ポイント減った。ほかの遅い時間帯でも働く人の割合は減少している。近年の働き方の見直しや短時間労働者の増加を受けて、労働時間そのものが短くなったからであろう。
しかし、この流れに逆行する時間帯がいくつかある。その1つが、12時から13時、いわゆる「昼休み」の時間帯だ。1時間の平均で、仕事をしている人の割合は32.2%(2011年)から35.4%(2016年)まで、3.2%ポイント増えた。
この理由は何か。夜遅い時間帯に仕事をすることを厳しく制限されているなか、一定量の仕事をこなすために、昼休みに仕事をする人が増えているからではないだろうか。このデータから、人々が休憩時間を犠牲にして大量の仕事をなんとかこなそうとしている姿が浮かび上がる。
一定時間以上の労働に対して休憩時間を付与すること、その休憩時間はまさに休憩に充てられなくてはならないことは法令上の要請であり、夜残業できないから昼に仕事をするといったことが起きていれば、それは管理職がやめさせなければならない。仮にも、管理職が「夜に残業できない分、昼の時間に仕事しろ」と命令するような実態があれば、これは重大な違法行為となる。昼休みに従業員がどのように過ごしているのか、人事はより注意深く観察してみる必要がある。そして、社員の意識を「休憩時間は、休憩する」というところに揃えていくことも大切だ。
労務管理を担う主体として、人事は昼休憩の実態を看過すべきではないだろう。

Text=坂本貴志