人事プロフェッショナルへの道

リーダーを生み出す組織において人事の果たす役割とは

2016年04月10日

有識者、実務家による、人事プロフェッショナルを目指すすべての人向けの特別講義。Lesson4では、リーダーを生み出す仕組みと、そこでの人事の役割を学ぶ。

リーダー育成は、もう長い間日本企業の人事の重要課題である。一方で、「リーダーシップ開発」が同様に重要課題として認識されていることは少ない。「まずリーダー育成とリーダーシップ開発は別物だ、という認識が重要です」と言うのはユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田由香氏だ。「人事がまず手をつけなくてはならないのは、リーダーシップ開発。なぜなら、リーダーシップとは、その会社のトップが、全構成員に持っていてほしいと考える価値規範のことだからです」(島田氏)
確かに、価値規範の明文化だけをみれば多くの会社で行われている。だが、それらが人々の内面に根付くまでの施策を、人事が継続的に実施している会社はそう多くはない。そこに切り込むリーダーシップ開発とは、リーダーやその候補者のみに対して行われるものでも、単発的な取り組みでもなく、全社員に対する継続的な取り組みでなくてはならないのだ。

全社員に向けたリーダーシップ開発とは

リーダーシップの中身は、当然企業ごとに異なる。ユニリーバの場合、「常に問われているのはオーセンティック・リーダーシップ。オーセンティックであるとは、自分の本来の姿や信念を大切にし、借り物でない正真正銘の本心にしたがってふるまうことです」(島田氏)。
それぞれが自分らしさを貫くと、衝突も起きよう。だが、「コンフリクトは悪ではないのです。それぞれが本心からの言葉で主張しあい、相手がなぜそのように考えるのかを理解しようとし、共通のゴールにたどり着く方法をともに考える。これこそが重要です」(島田氏)。
こうした姿勢のベースになるのが、ユニリーバ・バリューと呼ばれるもの。誠実さ(Integrity)、他者への敬意(Respect)、自らの行動や決断に対する責任(Responsibility)、パイオニア精神(Pioneering)の4つからなるユニリーバ・バリューは、オーセンティック・リーダーシップとともにユニリーバの全社員に共通して求められる"あり方"を示している。人事は、経営者と対話を重ね、自社のリーダーシップを定義するところから始めなければならない。
では、社員はどのようにしてこれらのバリューやリーダーシップを体得するのか。「さまざまなプログラムを準備しますが、最大の学びは職場で発生します。身近にいる尊敬できる人々が、どんな信念を持っているか、信念に常に裏打ちされた言動がいかに力強いかということに、仕事のなかで気づき、自分はどうかと自問することが最大のリーダーシップ開発機会です」(島田氏)

誰をリーダーに選び、リーダーには何を学んでもらうか

だからこそ、リーダーの選抜基準では、ユニリーバ・バリューの体現者であるか、オーセンティック・リーダーシップを発揮できているか、ということが最重要視される。「もちろんパフォーマンスも大切、そして本人自らがリーダーの仕事をやりたいと望んでいることも大切です。ですが、リーダーシップの足りない人がリーダーに選ばれることは、絶対にありません」(島田氏)

では、リーダーになる人たちやその候補者たちは、どうやってリーダーシップを強化するのか。「これまで以上に、自分自身に向き合うことが要求されます。『自分は何のために存在するのか』『自分の弱さは何で、それを他者にさらけ出せるか』といったことを内省し、より深く自己理解するための特別なトレーニングを受けます」(島田氏)
大切なのは、「すべての人が"本気"でリーダーシップとビジネスに向き合っていること」と島田氏は語る。「本気は、自分の内面からしか生まれません。人事の仕事とは、人々が本気になるお手伝いをすることだと考えています」

Text=Works編集部 Photo=しだらまさひろ

プロフィール

島田由香氏

Shimada Yuka ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長