フツウでないと戦力外?

キャンサーサバイバー

「がんで辞めない職場」は人事がつくる

2015年10月10日

What's this number? 4%

上の4%という数字は、がんに罹患した後、それを勤務先の人事に報告する人の割合だ。
「がんは死に直結する病気というイメージが強く、仕事を続けられないのではないか、病名を人事に伝えたら解雇されるのではないかと考えるからです」と、キャンサーサバイバー(がん経験者)の就労を支援するキャンサー・ソリューションズ代表取締役社長の桜井なおみ氏は語る。また、67%の人は直属の上司には伝えているが、上司も同じような不安を感じるため、「部下ががんである」という情報を人事に報告しないケースは多い。
しかし、現在、がんの5年生存率は約6割になり、入院期間も平均19.5日。外来で治療を続けながら働くことも可能になっている。病気のイメージによるネガティブな思い込みを、早急に排除する必要がある。「そのためには、『病気を人事に伝えても働き続けることができる』と全社員に周知徹底することが大切」と桜井氏は語る。

保健師と対話する武田氏。武田氏自身がキャンサーサバイバーだ。自身が治療と仕事を両立させたときの経験をきっかけに、復職支援制度や健康管理室の整備に取り組んだ。上司による支援だけでなく、業務内容や職場の人間関係など、社員の置かれた状況も理解している保健師は、キャンサーサバイバーの社員にとって心強い存在だ。

実際に、がんに罹患した社員が働き続けられるよう、サポート体制を整えたのがクレディセソンだ。同社では、常勤の産業医と保健師、人事スタッフで構成する健康管理室を設置し、がんに罹患した社員を支援する。
「がん手術で休職した社員が復職する際には、産業医と本人が相談し、時差通勤や短時間勤務など、必要となる労働条件の変更を人事に申請、人事部長の名で職場へ通達することで、職場での柔軟な受け入れ態勢を可能にしています」と、取締役戦略人事部/クレジット事業部担当の武田雅子氏は語る。また、がんは部位によって手術後の症状や治療方法が異なる。「手がしびれてパソコン操作が困難」「治療で休むことが多くなる」など、仕事をするうえで個別に配慮が必要な場合には、人事と職場の上司が連携し対応している。
「がんは治療を続ければよくなる可能性が高い。『がんに罹患しても働き続けることができる』という実績を積むことで、会社にとっても大切な人材が退職せずに済むのです」(武田氏)

※数値データはキャンサー・ソリューションズのアンケート調査結果

Text=湊美和Photo=平山諭