クールじゃないジャパン
なぜ、日本人は情報収集能力を高めないのか?
「海外のイベントや学会に参加すると、日本人だけでかたまっている姿をよく見かけます。昼だけでなく、夜には『ジャパニーズディナー』を開き、やはり日本人だけで交流しているのです」と指摘するのは、一橋大学で教鞭を執るかたわら、三菱重工業や日本取引所グループで社外取締役を務めるクリスティーナ・アメージャン氏だ。結果、日本人経営者は外国人経営者に比べ、最先端の経営知識や情報が不足しているという。「日本語が通じる仲間と過ごすのは快適かもしれませんが、それでは『日本人フィルター』を通した情報しか得られません。教科書にも載っていない最新の知識を得るには、世界中の人と交流し、彼らが発する情報をシャワーのように浴びるのが一番。海外に行っても、それをしようとしないのは惜しいですね」
日本人の多くは、外国人の「衝突を恐れず意見を交わし合うコミュニケーション」には不慣れだ。そのため、海外で外国人と交流すべきときでも消極的になりがちである。
いきなり外国人と交流するのが難しいのであれば、まずは海外の経済紙や調査報告書などから最新情報を集めるべきだとアメージャン氏。だが、そのために必要な英語の読解力にも、実は問題があるという。
「『英語は話せないが、読み書きなら得意』と考えている日本人は少なくありません。しかし、それは誤り。本来なら1分で読み終えるべきA4判1枚程度の文書を、15分もかけて読むような人が多いのです。そのような状態では、日本語では普通にやっている、短時間でその文章が持つ本質的な意図をつかみ、自分の意見をまとめるというところまで辿りつくことはできません」ただし、訓練によって読む能力は伸ばせるという。
「私自身も日本語での情報獲得には大変苦労しましたが、今ではパッと見れば概略はわかります。また、情報を集めて自らの意見をまとめたら、考え方や文化が異なる人との議論を重ねることにも挑んでほしい。それでこそ、本当の生きた情報を得られ、グローバルリーダーたちに近づくことができるのです」
Text=白谷輝英Photo=平山 輪
クリスティーナ・アメージャン氏
Christina L. Ahmadjian アメリカ育ち。ハーバード大学卒業後、スタンフォード大学ビジネス・スクールの経営学修士課程を修了。1981年に来日。2004年に一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、2012年には一橋大学大学院商学研究科教授に就任した。