求人・求職(2019年4月版)
厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、2018年の有効求人倍率は1.61倍になり、前年比+0.11ptと上昇した(図1)。有効求人数は278.0万件で前年比+8.4万件、有効求職者数は172.5万件で同-6.8万件となった(図2)。有効求人倍率は2009年以降、一貫して上昇を続けており、労働需給は逼迫した状況が続いている。
一般職業紹介状況は、ハローワークを通じた活動しか捉えることができない。ここでは、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、求職側の状況をより詳細に分析してみよう。JPSEDでは転職意向や就職意向について尋ねている。2017年末で転職・就職意向がありかつ活動をしている人の割合は6.2%(前年比-0.7%pt)と前年から低下しており(図3)、その人数は677万人となっている。また、活動をしていない人を含めた転職・就職希望者も14.0%(前年比-2.1%pt)と低下し、人数は1544万人となった。転職・就職希望者数の減少は、好景気のなかで失業中の就職希望者が減少していることも背景にあるが、ボリュームとしては現在就業中で転職を希望している人の減少が大きい。
年収別に転職希望者の割合の変化をみても、あらゆる層で転職希望者割合が低下していることが確認できる(図4)。特に、もともと転職意欲の低かった高所得者層の転職意欲はさらに低い水準となっている。転職・就職希望者の母集団が全体として縮小しているなかで、高所得で高スキルの人材も転職市場に少なくなっており、企業にとって優秀な人材を採用することはますます困難になってきていることがわかる。
多くの会社で働き方の見直しが進むにつれ、労働者が転職をするインセンティブは緩やかに減少している。このようななか、企業はさらに大胆に働き方の見直しや待遇の改善を進めていかなければ、人材獲得競争に勝てなくなっていることを自覚しなければならないだろう。
図1 有効求人倍率
図2 有効求人数と有効求職者数
図3 転職・就職意向
文責:坂本貴志(研究員・アナリスト)
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