不本意非正規(2020年4月版)
総務省「労働力調査」によれば、2019年の不本意非正規雇用者※の比率(不本意非正規比率)は10.9%となった(図1)。不本意非正規比率は、前年比で-1.4%ptと、政府目標の達成に向けて着実に低下している。不本意非正規雇用者の人数も、2019年には236万人と前年比-23万人と減少している。
次に、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、正規の職がないから非正規になったという人(不本意非正規)がその翌年にどうなったのかをみてみよう。
不本意非正規でなくなるということは、①非正規雇用ではなくなるか、②非正規雇用のままであってもその理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」ではなくなる、ということになる。
その内訳をみてみると、前年に不本意非正規であった人のうち、翌年正規になった人は10.0%とそこまで多くない(図2)。他方、非正規雇用のままであるがその理由が変わったという人が34.7%いて、不本意非正規ではなくなった人の中で大勢を占めている。
非正規雇用者がその職についている理由別に仕事満足度をとると、不本意非正規は仕事満足度が低い傾向が見て取れる(図3)。
要するに、不本意非正規を減らすためにはその人を正規雇用に転換していくことはもちろん重要だが、それと同時にたとえ非正規雇用のままであったとしても、非正規雇用であることに関する本人の納得感を深めることが重要なのである。
同一労働同一賃金が叫ばれるなか、企業は、非正規として働いている人に対して、その仕事がなぜ非正規であるのか、これまで以上にしっかりと説明を行う責任がある。そして、企業は、合理的な説明がつかないような非正規雇用をなくしていく必要がある。非正規雇用者が納得して仕事に取り組めるような環境づくりを、今後も着実に推進していきたい。
※不本意非正規雇用者とは、①非正規雇用者であり、かつ②現職についた主な理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した人を指す。
※政府目標:不本意非正規雇用者比率を、2020年までに10%以下に低下させる。
図1 不本意非正規雇用者の比率と人数
図2 不本意非正規雇用者の翌年の雇用形態とその理由
図3 非正規雇用者の理由別仕事満足度
文責:坂本貴志(研究員・アナリスト)
※2019年3月時点の本記事はこちら
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