子育てと仕事の両立環境はどれだけ整ったのか 萩原牧子

2018年08月09日

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リクルートワークス研究所では、「全国就業実態パネル調査」を活用して、日本の働き方を5つの側面から評価する「Works Index」を毎年公表し、働き方の変化を可視化している。先日(2018年6月)発表したWorks Index2017では、1年前と比べて、女性の就業率が上昇したこと、また、長時間労働が減少して、柔軟な働き方が広がりつつあることが確認された。女性が子育てをしながら働き続けられる環境が整いつつあるのではないか。このコラムでは、「全国就業実態パネル調査」を用いて、子育てと仕事の両立環境の変化について、さらに、みてみよう。

出産しても働き続ける女性のほうが多い

まずは、第一子出産離職率の推移をみる(図1)。5年に1回の頻度で実施される、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」の最新値(出生年2010~2014年)は46.9%であった。

それまで20数年間変わらなかった「第一子の出産を機に約6割もの女性が離職する」状態から一気に約13ポイントも離職率が減少し、出産によって辞めるよりも、働き続ける女性のほうが多くなった。毎年実施している「全国就業実態パネル調査」でその後の推移をみると、第一子出産離職率は確実に減少傾向にある。

図1 第一子出産離職率の推移

男性の家事育児参加は一部の人で進む

子育てをしながら女性が働き続けるためには、家事育児に男性も参加する必要がある。末子6歳未満の子どもをもつ人の、働いていた日の家事育児時間について、2016~2017年の変化をみてみる(図2)。

図2 働いていた日の家事育児時間
(末子6歳未満の子どもをもち12月時点就業者、夫婦と子ども世帯)

平均値(分)は男女ともに増加し、男性の場合、平均90分(2016年)から116分(2017年)と26分増加しているものの、女性のほうが44分(359分から403分)とその増加は大きい。

また、男性の家事育児時間の分布(2017年)に注目すると、家事育児時間が長い人の割合が増えた一方で、全く参加していない(0分)が10.1%であり、30分未満(4.5%)と合わせて、約15%が家事育児にほとんど参加していない。ばらつきを表す標準偏差も前年より大きくなっており、男性の家事育児時間の平均値の増加は、全体ではなく、一部の人で進んでいることによるものと考えられる。
長時間労働が是正され、柔軟な働き方が広がっても、男性の家事育児参加が単純に増えるわけではない。「夫は働き、妻は家庭を守るべき」といった、社会的規範を変化させていく必要があるだろう。

萩原牧子(リクルートワークス研究所/主任研究員・主任アナリスト)

※本稿は「Works Index 2017」に掲載されているコラムの転載(一部調整)です。

・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。