従業員の国籍は100カ国。多国籍企業では「価値」の共有が重要

アケル・ソリューションズ

2015年04月23日

石油・ガス産業で170年の歴史

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同社の歴史は、1841年に創業したAker社、および1853年に創業したKvaerner Brug社に端を発する。両社は、元来造船を主な生業とする作業所であったが、その後事業を拡大し、とりわけ1960年代の北海油田の発見を機に、造船等で培った技術を活かして、石油・ガス産業への進出を開始した。
競合関係にあった両社であったが、競合関係ではなく協同関係となることで両社にとってのメリットを高めるべく、2002年に合併。2008年に現在の社名となった。

2014年10月には、市場における競争力をより一層高める観点から、海底開発、複合ケーブル事業、エンジニアリングと、保守・改修・運転領域を担う会社(Aker Solutions)と、新設された石油サービス投資会社であるAkastorの一部門として独立した、掘削技術等の事業領域を担う事業体の二つに分割された。創業170年を超えて、市場の変化に柔軟に対応し、競争力向上に力を注ぐ。
現在は、世界35カ国・従業員約28,000人を抱えるグローバル企業である。

グローバル企業としてダイバーシティが進む

歴史的な経緯や産業の傾向として、従業員構成では男性比率が高くなりがち。しかし、同社では、2013年現在、従業員の22%を女性が占めている。女性のエンジニア志向が高まっていることなどから、今後、女性が占める比率はより一層高まっていくと考えられている。取締役会の構成については、会社法の求める「男女構成比がそれぞれ40%以上」を満たす形で、11人中5人が女性となっている。

また、同社で働く従業員の国籍は、約100カ国におよび、グローバル企業としてのダイバーシティが進む。そのため、多様な国籍の従業員間相互のコミュニケーションを円滑にするため、同社における公用語は英語とされている。

エンジニア分野における女性活躍を経済団体が支援

石油・ガス分野のエンジニア分野では、男性の存在感が大きく、女性活用がなかなか進まないという課題が存在した。
そのような状況下において、女性のより一層の活躍を推進すべく、同国の総合経済団体(NHO)、および石油・ガス産業の経済団体は様々な取り組みを講じている。具体的には、女性に関するオンラインの人材プールの創設や、エンジニアの魅力をアピールする説明会の開催、パンフレットの配布等といった施策を積極的に実施している。

その結果、エンジニアを志望する女性は着実に高まりを見せている。実際、エンジニアを育成する5年間の教育プログラムに占める女性の割合が30%(2012年)、また工科大学の志望者に占める女性の割合が50%以上になったという。

6つの「価値」を共有し、事業の強化を図る

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同社のビジョンは「価値の実践により、石油・ガス分野の課題解決において選ばれるパートナーとなること」。この実践すべき価値として、「顧客志向」「健康衛生・安全・環境重視」「人材とチーム力」「率直な対話」「実践主義」「高品質の実現」の6つを挙げている。
事業を展開するエリアが多岐にわたり、多様かつ多数の従業員を抱える同社では、ビジョンの実現において、これらの価値に対する理解をいかに浸透し深めるかが重要な課題となるという。

そこで、このような課題に対処すべく様々な施策を講じている。まず、経営やエンジニアといった職種を問わず、すべての新入社員に対する研修プログラムを用意するとともに、企業の方針を記した書面への署名を求めることで、入り口段階での価値の共有を図っている。また、入社後においても、定期的にインターネットを利用して、価値の理解を促す研修を実施しており、継続的な価値の理解およびその深化に向けて取り組んでいる。

また、価値の中でもとりわけ「健康衛生・安全・環境重視」については重点を置いており、この価値に関連して、仕事上のみならず、仕事外において、自身が実践するそれぞれ3つの取り組みを、各従業員に誓わせている。また、その取り組みが、他の従業員と比較してどの程度のレベルに位置しているかを示すことで、より高い次元の取り組みを促進している。なお、「健康衛生」には従業員自身の健康が含まれることから、同社は従業員の健康増進のため、各地にトレーニングルームを設けるなど、積極的に活用を促している。
同社は、いわゆるブルーカラー、ホワイトカラーといった区別は行っていない。そのような垣根を取り払う姿勢は「価値の共有」においても同様であり、全世界の全従業員に対して、同じ価値を理解し、その実現を図ることを求めている。

事業やエンジニアへの興味を深める体験施設

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2年前、社屋内に“Engineerium”という、同社の歴史や主要なプロジェクト等に関する資料を展示するとともに、エンジニアリングにかかわる様々な体感設備を設けた体験施設をオープンした。

“Engineerium”では、これまでに手掛けた主要なプロジェクトを、装置の模型などを使いながら詳しく紹介。双方向的な展示で工夫を凝らし、訪問者が実際に体を動かして物理等のメカニズムを体感することや、タッチパネル式の展示により、関心の深い事項についてより多くの情報を得るといったことが可能になっている。
とりわけ特徴的なのは、エンジニアの1日体験をする学生向けプログラム“engineering challenge”である。参加学生には、経営や安全、環境、技術といった異なる分野の責任者としての役割を与え、実際にプロジェクトを進める体験を通じて、エンジニアの仕事への理解を促すもの。

この施設において、石油・ガス分野に従事する者、教育セクターに属する者、その他一般の訪問者の三者が交流する場を設けるだけでなく、広くエンジニアの魅力をアピールし、テクノロジーやイノベーションの意義の理解を深めることを通じて、興味喚起やエンジニアを志望する若者を増やすことを目指す。実際、地域の学生がこの施設を訪問し、熱心に展示に触れている様や、プレゼンテーションを行っている。