みんなが早く帰れる組織の「掟」

KPIで時間への意識を高めたら「次のステージ」に移るべし/中外製薬

2017年06月10日

 中外製薬が2007年から取り組んだ長時間労働抑制のキーワードは「KPI」(*)だった。さまざまな数値目標を設定することで取り組みを加速させたと、人事部の緒方泉氏は語る。「残業時間を前年度以下にするという全社目標を立てたうえで、約80ある部署ごとに具体的な取り組みとKPIを決定。
『全員が月1回以上の有給休暇を取得』『残業は原則20時まで』など、自分たちで職場の実態に合ったやり方を選ぶほうが、成果が上がると考えたからです」
これらの達成度を継続的に分析し、取り組み内容を改善することで、残業時間は徐々に減少していった。現在、1人あたりの月平均法定時間外労働は6時間となっている。
そんな同社は、2017年から方針を転換。KPIを定めないやり方に切り替えたという。「10年近く改革を行った結果、社内には長時間労働を抑制する意識が定着しました。そこでKPIは廃止し、仕事とプライベートの両方の質を高めることに着目し、『次のステージ』にシフトすることにしたのです」
現在は「ワークライフシナジー」というスローガンのもと、仕事とプライベートが相乗効果を生む仕組みづくりを進めている。部署ごとに目標を立てるやり方は以前と変わらないが、KPI目標を廃止したことによって、定性的な目標を立てて働き方改革を目指すケースが増えているそうだ。
人事部が愚直に情報発信を続けている点にも注目したい。ユニークなやり方(下表参照)で働き方改革を進めている事例を、緒方氏らが全国の部署に足を運んで取材。記事にまとめてイントラネット上で公開するなどしている。同社では今後も、こうした取り組みを労使で検討しながら、全社的に加速していく方針だ。

(*)KPI......Key Performance Indicatorsの略。目標達成度を計測するための指標群を指す。

Text=白谷輝英Photo=平山諭

緒方泉氏

Ogata Izumi 中外製薬 人事部 制度労政グループ