有給休暇の取得は進んでいるのか 大谷碧
2019年4月1日より順次施行されている働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制などが導入され、私たちの働き方はこれまでとは変わりつつある。年次有給休暇についても、政府は有給取得率70%以上を目標に掲げており、2019年4月からは、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対し、毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させることを義務化した。このような状況のなか、年次有給休暇の取得状況はどのようになっているだろうか。
厚生労働省の「就労条件総合調査」は、従業員30人以上の民営企業を対象とした企業調査であるが、それによると、2021年の有給休暇平均取得日数は2020年と変わらず10. 1日であった。また、有給休暇取得率は56.6%となっており、前年の56.3%から微増はしているものの、政府目標の70%以上は達成されていない(図1、今後の最新値は「定点観測 日本の働き方」の「有給休暇取得率と平均取得日数」を参照)。1990年からの変化をみると、有給休暇平均取得日数は微増しているが、有給休暇取得率は50%前後を推移しており、この30年間ほとんど変化していないことがわかる。
図1 有給休暇取得率と平均取得日数
出所:厚生労働省「就労条件総合調査」
注:2000年(平成12年)は、調査対象期日を12月末日現在から翌1月1日現在に変更し、名称を「平成13年就労条件総合調査」と変更しており、「平成11年賃金労働時間制度等総合調査」と継続している。このため表示上2000年が欠損となっている。
注:政府目標は2020年に70%以上。
次に、個人に対する調査であるリクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を使用して、有給休暇を75%程度取得した者がどの程度いるかみてみよう。まず、雇用者をみると、2021年は44.5%とまだ全体の半数には満たないものの、6年前である2015年の33.2%から比較すると11.3%ポイント増加していることがわかる(表1、今後の最新値は「定点観測 日本の働き方」の「有給休暇を75%程度以上取得した者の割合(雇用形態別)」を参照)。また、有給休暇を75%程度以上取得した者が増加している傾向は雇用形態別にみても大きくは変わらない。
表1 有給休暇を75%程度以上取得した者の割合(雇用形態別)
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:ウエイトバック集計を行っている。
このような傾向は従業員規模別にみても同じだろうか。従業員規模が小さい中小企業などの場合、人手不足などの理由から、有給休暇を取得しにくい可能性がある。そこで、従業員規模別にみていくと、企業規模にかかわらず有給休暇を75%程度以上取得した者の割合は増加傾向ではあるものの、企業規模による差が大きく、従業員規模が小さいほど割合が低いことがわかる(図2、今後の最新値は「定点観測 日本の働き方」の「有給休暇を75%程度以上取得した者の割合(従業員規模別)」を参照)。たとえば、従業員規模が29人以下の場合、2021年は26.7%となっており、従業員規模1000人以上の51.5%と比較すると24.8%ポイントの差があり、大企業と中小企業で有給休暇の取得のしやすさに差があることが考えられる。また、前年の2020年と比較しても、従業員規模29人以下のみ微減している。有給休暇の取得率をより向上させるためには、有給休暇が取得しやすい職場環境を作るなどの動きを中小企業にまで広めていく必要があるだろう。
図2 有給休暇を75%程度以上取得した者の割合(従業員規模別)
出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:ウエイトバック集計を行っている。
大谷碧(研究員・アナリスト)
・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、
所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。