リクルートワークス研究所 研究員 坂本貴志

自らの想いを起点に、研究を深める。
データと現場の声を集め、社会に響く提言を目指す。

リクルートワークス研究所
研究員

坂本貴志Takashi Sakamoto

官庁と民間で培った視点をもとに、社会に響く研究に挑む。

どのような魅力と可能性を感じて、リクルートを選んだのでしょうか。

リクルートワークス研究所が経済学など自身の専門知識を活かすことができ、かつ柔軟に働ける場だと感じたからです。

もともと社会全体の制度や仕組みに対する関心が高く、大学と大学院では公共経済学・財政学の分野を専攻していました。初職は厚生労働省に入省し、社会保険制度の法改正や政省令の調整など、国民生活に大きく関わる業務に従事しました。
その後、内閣府に異動し、官庁エコノミストとして経済財政白書の執筆や経済分析に従事しました。景気動向を示す指標や経済成長率、失業率、物価動向などを日々分析し、経済の実態を把握する仕事です。
こうした分析結果は、政府が毎月景気状況について判断する「月例経済報告」や、経済に関する年次報告書である「経済財政白書」などにまとめられ、政府見解とともに公表されます。これらは企業や国民に向けて経済の現状を正しく理解してもらう重要な手段として位置づけられています。
内閣府では、経済分析を専門とする業務を通じて、マクロ経済や景気動向に関する知識が身に付きました。また、首相官邸の判断材料となる情報を提供する役割も担い、政府の意思決定プロセスを学ぶ良い機会となりました。

続いて転職をした民間シンクタンクでは、日本や世界の経済成長率の見通しを作成するほか、その時々の経済状況、政策効果などを分析し、結果をレポートにまとめるといった仕事をしました。メディアの方に取り上げていただくことで、自分の考えを社会へ発信する機会も増えました。
現在もそうですが、自分が分析したデータの結果や解釈などを通じて多くの人に経済や社会の問題について考えてもらえることは嬉しいですし、そういった仕事にはとてもやりがいを感じます。

こうしたなか、リクルートワークス研究所に勤めていた大学時代の友人から、研究所のことを聞きました。自分の関心に応じて研究テーマを選ぶ自由があり、研究にしっかり予算がつくことを聞き、それまで培ってきたエコノミストとしての知識や分析力を活かすことができると考え、興味を持ちました。また、リモートワークを含めて柔軟な働き方ができることも魅力に感じました。

リクルートワークス研究所 研究員 坂本貴志

加えて、リクルートワークス研究所では、「全国就業実態パネル調査」という独自のデータを活用でき、ほかのシンクタンクでは得られないオリジナリティのある分析が可能です。民間シンクタンクが活用する公的統計は、ほかの研究者やシンクタンクでも使われているものになるため、研究所独自の統計データを用いた分析ができるということもとても良いと思いました。

マクロの視点から社会を見つめ、次世代への提言を探究。

現在の仕事内容について教えてください。

最近私が取り組んだものは、高齢期の就労に関する研究、賃金に関する分析、機械化・自動化に関する研究などです。ここでは、高齢期の就労に関する研究についてご紹介したいと思います。

少子高齢化が進む日本では、年金や医療など社会保障に関する歳出が増加し、それを負担する現役世代の負担も増えています。そのため、社会を持続可能なものにするためにはシニアの労働参加のさらなる拡大は必須です。こうしたなか、高齢者が働きやすい環境をどう整備するかは重要な課題となっています。
国としては働ける限り就労を継続してもらうことが望ましいですが、一方で個々人の立場に立てばいつまでも現役時代と変わらずに働き続けるということには抵抗を感じる人もいます。私個人の立場にたっても、やはりそう思います。
こうした社会の全体最適と個々人の考えとのギャップを埋めたいという思いがあり、このテーマについて発信を続けています。

実際に研究を行うフローとしては、まずそれぞれの研究員が研究したいテーマを起案し、1年間の計画を立てます。
個々人のキャリアや企業内のマネジメントに関するものなど、さまざまなテーマが起案されていますが、私は比較的マクロの経済や財政に関連するテーマを扱うことが多いです。
研究プロジェクトは、途中で所長や外部有識者を交えた相談会でフィードバックを受ける機会がありますが、その対応なども基本的には個々の研究員に任されています。
こうした所内での報告などもはさみながら、年度末に向けてレポートの発出や外部関係各所とのコミュニケーションを行っていきます。

リクルートワークス研究所のプロジェクトは、基本的に1年を単位として進められ、最終的に調査結果や分析内容をレポートとして発表します。比較的短期間での研究成果を出すということも意識されています。

発信力とヒアリングの機会があるからこそ
社会に大きな影響を与えられる。

仕事のやりがいについて教えてください。

リアリティのある提言を通じて、社会に影響を与えられることがやりがいにつながっています。そのためには、データだけでは見えにくい現場での課題やニーズを把握することも重要です。

ほかの組織では企業へのヒアリングをきめ細かく行うことが難しい場合もありますが、リクルートワークス研究所では企業のトップ層や人事担当者に直接ヒアリングを行い、現場の声を丁寧に拾い上げることができます。

企業へのヒアリングの際には、リクルートの研究機関であるということに対する信用を感じます。リクルートやリクルートワークス研究所が長年培ってきた信頼関係のおかげで、さまざまな企業が研究所の調査に協力したいと感じていただけるのだと思います。

リクルートワークス研究所 研究員 坂本貴志

また、リクルートワークス研究所では、研究成果を社会に広く発信することが奨励されています。
研究プロジェクトを通じたレポートや記事を発出したりするのは当然のこととして、これらを通じて新聞、テレビ、書籍、Webメディアなど、多様なメディアの方と連携しながら研究内容を発信する機会があります。
また、論文を執筆し、学会で活躍されている同僚もいます。

個々の研究員に合った活動の仕方を研究所として応援してくれますし、多様なスタイルが認められていることはとてもありがたく感じています。

自由と責任のなかで、
社会にインパクトを与える解決策を追求し続ける。

リクルートワークス研究所で働く魅力と、今後やりたいことについてお聞かせください。

自分のこだわりや問題意識を反映できるのが良いところだと思います。

リクルートワークス研究所は、研究者一人ひとりがテーマを設定して研究を進めるスタイルがメインです。個人の裁量も大きく、研究テーマの選定から調査の進行まで主体的に行えます。研究の進め方も特定の型はありませんし、ルーティン業務の割合も少ないです。
同僚と協業する場面も多くありますが、個々人の仕事のやり方や考えを尊重してくれますし、効率よく作業が進められると感じています。

一般的に仕事の性質や組織、職種によっては、ある程度型が決まっていて、そのやり方に従うことが求められるタイプの仕事もあります。状況にあわせて自分の裁量でやり方を変えるというタイプの仕事と、どちらが良いかというよりも、「どちらが合うか」ということだと思います。
私の場合は、自分の裁量でやり方を変えるタイプの方が合うなと感じています。自分の研究テーマを自由に追求し、発信したいという人にとってリクルートワークス研究所は良い職場だと思います。
自由度の高さと裁量がある一方で、成果に対する責任も伴います。自由でありながらも、発信については求められるものが多いので、そこは大変だと思います。

リクルートワークス研究所 研究員 坂本貴志

今後に関しては、引き続き社会に適切な情報を発信していきたいと思います。
今後、日本では少子高齢化が進むなかで、経済成長率はますます低下し、財政も厳しさを増していくでしょう。労働市場の観点からみれば、現役世代が減少していくなかで人手不足の問題が深刻化していくことが大きな課題です。
こうした状況に対処していくために、何か特別な政策が必要なわけではありません。必要な対応策は必然的に定まってくると思います。市場メカニズムをうまく活用しながら、多くの人が長く働き続けられる環境を創出すること、人手に頼らずに生産できる体制を整えること、といった考え方になるはずです。
あるいは、どうしても必要なサービスとそうでもないサービスとを切り分けることなども、今後市場から求められていくことになるでしょう。
こうしたことを、リクルートワークス研究所のデータと発信力を活かして世の中に伝えていきながら、少子高齢社会における持続可能な社会のあり方について発信していきます。